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リーマン破綻以降の金融の動き

2008_10_19 331mk.JPG
2008.10.14に届いた、吉田繁治さんからのメールです。画像は、玖珠町北山田の案山子です。地球温暖化で地球が汗をかいているところです。 

・・・・・・・・・・・・・・

 おはようございます、吉田繁治です。投資銀行リーマン・ブラザーズ
の倒産と保険会社AIGの破産に絡み、『血の月曜日(228号)』をお
送りして、1か月が経過しました。

・・・・・・・・・・・・・・

 実際にこの場面に触れると、『とんでもない事態』だとつくづく思わ
れるわけです。VIX指数(用語注:株価の変動を示す標準偏差÷平
均価格)が60を超えたとか、リートが潰れたとか、惨憺たるものがあ
ります。

今夜(米国現地10月10日)はリーマン関連のCDS清算会が行われ、
これまで明らかにされていない部分がいよいよ噴出
する事になるわけです。いったいどこが、どれくらい引き受けていた
のか・・・マグマが今正に、地響きを鳴らしながら火口へと上昇して
いるとでも言えるでしょうか・・・>

VIX(株価変動のボラティリティの指数)や、CDS(債務保証保
険)の清算価格をご存知とは、相当に、金融に詳しい方でしょう。

【資金ショート】
全米のみならず、欧州の金融機関でも、大手・中小に関係なく、資金
ショートが続いています。世界の金融の中心、ウォール・ストリート
は、この1か月で消えてしまいました。

英国を含む欧州政府と中央銀行は、
・なりふりかまわず、短期資金の供給(すでに50兆円)を行い、
・損失で足りなくなった資本を補うための、
・合計では数十兆円になるであろう出資を、決定しました。

これは、金融機関の国有化と、デリバティブを含む業務に規制をかけ
ることも意味します。デリバティブの時代は、終わる。

各金融機関の間で、今、短期資金の貸し借りが停止しています。
原因は、どれくらいの損を抱えているか、お互いに、わからないため
です。この短期融資(わが国ではコールマネーと言う)は、1回が数百
億円~数千億円と巨額です。

短期市場がないと、金融機関では通常の業務が停止し、資金不足から
の倒産が、次々に出ます。

(注)ニュースでは、三菱UFJが、株価が、一週間で半分に急落し
た投資銀行モルガンスタンレーの20%の株を取得し、9000億円を出資
したということです。損をしなければいいのですが・・(08.10.14)

これほど広範囲で深い『短期資金市場の消滅』は、未曽有です。

日本の、かつての金融危機(1997年~)がちっぽけに思えるくらいの、
危機の金額規模。日本政府は、金融機関に対し、約40兆円を投入し
た。今回と比較すれば、わずかな額です。

【目的】
本稿の目的は、
(1)米欧を中心とする世界の「損失額」に目処をつけ、
(2)今後の推移と、経済を予測すること、の二項です。

●本稿では、政府系エコノミストやIMFが言っている損失の数倍の、
金融機関の損害を想定しています。

【日本と米国の相違点】
日本の90年代末の金融危機と、今回の金融危機の最大の相違は、$20
兆(2000兆円)を世界から借りた債務国である米国が、世界の金融危
機の中心にあることです。

米国は、通常でも1年100兆円相当の、海外からの純資金流入(純債務
の増加)が必要です。

貿易赤字、財政赤字、企業の社債購入、及び世帯のキャッシュフロー
の赤字のためです。米国の世帯は、可処分所得の130%(≒年収の1.3
倍)の負債を、抱えています。

そのため、金融救済のための政府・FRBが必要とする資金で、海外
からの資金流入に頼ります。

わが国は、世帯の金融資産が今も1450兆円(2008年)あり、世帯の負
債は、少なかった。そのため1997年に始まった金融危機を国内で、解
決することができた。米国は、それができない。金融救済に必要な資
金も、海外に仰がねばならない。

米欧の住宅金融の危険を、本マガジンで、数年前から警告していたこ
とが、現実になったことを誇っても、意味はない。

重要なことは、概算の数字を使った、今後への見通しです。
そのため、微力を尽くします。データは公開されたものです。そこか
ら、論理で推量します。

(注)心配されていた08年10月13日(現地時間は月曜日)の欧州市場
の株価は、欧州の各国政府・中央銀行の、前週末の緊急対策を好感し、
先週の下落から反発し、午前中の前場で、6%から7%上げています。

しかし、今週がどうなるか、わかりません。今週は、米欧の、金融機
関の9月決算(4半期)での損失が確定します。市場が消えた住宅関連
証券は、時価評価はしていな数字です。

欧州政府による対策の、主な中身は、
・取り付けを防ぐための、預金の全額保護、
・破産した金融機関への、政府資本の供給、
・銀行間の短期融資の、政府による保証、
・企業が短期資金調達のために発行するコマーシャル・ペーパー(日
本風にいえば手形)の、政府による買い取りです。

政府マネーを使い「あらゆる対策」を実行すると言う。

(注)本稿は、有料版の緊急増刊号を、ほぼ同時に、無料版としても
送るものです。

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<Vol.229:緊急特別号:ウォールストリート;恐怖の8日間>
      
         2008年10月14日

 1.4種の巨額損に、見当がついていないという問題
 2.ヘッジファンドには解約が殺到している
 3.14か月の経緯
 4.米欧の政府・中央銀行の対策
 5.中央銀行はどういった形で、金融機関に、資金供給を行うのか?
 6.問題になるのは、米国経済の信用
 7.米欧の資産価格の下落
 8.重要な事実

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■1.4種の巨額損に、見当がついていないという問題

問題になるのは、以下の4種の、表面化しつつある巨額損です。

損害の全貌が見えないことが、債券・証券を保有している金融機関へ
の信頼(trust)を、棄損(きそん)しています。金融は、トラストで
成り立ちます。

金融機関が損失を公表するのは、損を償却しても、自己資本(Tier 1)
に、リスク資産・負債の、8%以上の余力が残るときだけです。従っ
て、今週の3か月決算で示されるのは、「健全な内容」に見える額に調
整された損失にすぎません。

金融機関は、リスク資産の8%の自己資本がないと、国際業務と銀行間
の貸し借りができない。また、預金者からの、取り付けも起こる。

「先月までは、わが社の財政は健全」と言っていた。「今週は、図ら
ずも、マーケットでわが社の株が売られ、資金が足りない」となるの
が金融機関。嘘ですが、金融秩序のためと言えば、許される。経営者
は、後で、糾弾を受けます・・・

▼問題(1):金融機関の総損失はいくらか?

金融機関が抱えている帳簿上の、及び子会社とデリバティブを含む簿
外の損失と含み損の金額の、見当がつかない。これが、今の、根本的
な課題です。

金融は「自己資本と信用」で成り立ちます。
・この自己資本と信用が、どれくらい壊れているのか、
・正味の残存資本はいくらか、が分からないと金融業務は、停止して
しまいます。

本稿では、後半部で、金融機関の総損失を予想します。

▼問題(2):米欧の住宅が、どこまで下げるか?

不良債権になった、2007年から下がった米国と2008年から下がってい
る欧州の住宅価格が、どれくらいで下げ止まるのか、見当がついてい
ない。

米国の住宅関連ローンの額は1500兆円です。住宅ローン(1200兆円)
と、住宅担保のホームエクイティローンや消費者ローンがある。

英国を含む欧州でも、ほぼ1500兆円の住宅関連ローンがある。米欧を
合わせれば、3000兆円の、米欧世帯(1.5憶世帯)への貸し付けでしょ
う。

20%の損でも、どこの政府も、面倒を見切れない600兆円(推計)とい
う巨額に達します。

・米国の住宅関連ローン 1500兆円
・欧州の住宅関連ローン 1500兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・20%の損失で・・・  -600兆円(2009年まで)


米国がリーダシップをとるIMF(国際通貨基金)は、米国の住宅と
商業用不動産のローンの総損失を、143兆円に達すると発表しています
(2008年10月時点です)。

しかし、米国の住宅価格が2009年末に向かい、あと20%下げれば、そ
の2倍(約300兆円)の損失になる。

2009年に向い、米国住宅の追加の20%の下げは、すでに市場で予想さ
れているのです。

これに、価格高騰が米国より大きかった欧州の住宅下落による今後の
損失(推計で、1500兆円のローン×20%=300兆円)が、加わります。

●以上が、不動産関連ローンでの、米欧の合計損失を、600兆円と見る
理由です。

これが、合計で6000兆円の資産・負債をもつ米欧の金融機関とファン
ドの、損失になります。10%の損ですから、住宅ローン分だけで、今
の自己資本は全部、飛んでしまいます。

【補足説明】
前回述べたように、人ではなく、住宅に貸し付ける米英の[ノンリコ
ース・ローン(非遡及型貸し付け)]は、下げた住宅を手放せば、ロ
ーン残の支払いから、解放されます。

住宅価格が下げの傾向になると、人は、すぐ住宅を手放し、引っ越し
ます。そのため、市場には中古住宅があふれ、金融機関のローン審査
は前より厳しくなるため、住宅価格は一層下げます。

米英の住宅には、人に貸す[リコースローン(遡及型貸し付け)]の
日本と違い、一旦下げれば、それが原因で一層下げるという価格メカ
ニズムがあるのです。

●米欧の不動産融資での、600兆円の損(2009年まで)は、本マガジン
の予測です。まだ、世界では、米欧を合わせた、住宅ローンの損失は
計算されていません。

▼問題(3):世界の株価下落による損に、見当がついていない。

世界の株価の時価総額は、2007年8月が、$63兆(6300兆円)でした。
(国際取引所連盟:WFEの集計)

世界の、株価時価総額は、2008年10月1日時点で、$20兆(2000兆円)
も減っていた。

加えて2008年10月10日時点では、$10兆(1000兆円)分が減っていま
す。

合計の損害は、3000兆円です。
世界平均の株価は、半額に下落しています。

・2007年8月の時価総額    6300兆円
・2008年10月1日の時価総額  4300兆円
・2008年10月10日の時価総額 3300兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・現時点での総損失     -3000兆円

●この3000兆円の、株で露呈した損と含み損が、世界の金融機関・企
業・個人の資産を減らしています。

一体どこで、株価下落が止まるのか。
見当がついていない。

米欧の金融機関とファンドが持つ株を、30%と仮定すれば、3000兆円
×30%=900兆円の含み損です。株価は、後で、回復することがあるの
で、金融機関の損は数百兆円でしょうか。

▼問題(4):6200兆円の元本の、CDS(債務保証保険)の最終決着
が見えない

2000年代の世界金融には、融資、社債、証券に対し、総額で6200兆円
のCDS(債務保証保険)がかかっています。

住宅ローンや社債を含めあらゆるローン・融資に対し、裏で、CDS
が掛けられていると見ていい。CDSは、相手となった金融機関が倒
産すると、清算を迫られる契約のものです。

保証料(プレミアム)をもらい保証していた金融機関(たとえば破産
したAIG等)が倒産すると、どうなるか。

【事例1】
2008年10月7日に、国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)は、
破産した米住宅証券会社ファニーメイとフレディマックの住宅証券に
かかっていたCDS(債務保証保険)の、「清算価格」を決めました。

●ファニーメイが元本の91.51%、フレディマックが94%です。両社の
平均で92.75%です。両社のCDSを引き受ける相手となっていた金融
機関には、100%-92.75%=元本の7.25%の損害が生じたことを示し
ます。

両社が、発行する住宅ローン証券に掛けていたCDSの元本は、$50
00億(500兆円)です。

この清算で、500兆円×7.25%≒36兆円の損害が、相手となっていた金
融機関に生じたことを示します。

(注)ファニーメイとフレディマックには、米政府が救済することを
決定しています。

これは、米政府の債務(過去は1000兆円)が、500兆円増え、1.5倍の
1500兆円になったことを示します。ファニーメイとフレディマックが
発行した住宅ローン証券の、今後の増加するデフォルト(未回収)の
損は、米政府のものになるということです。

【CDSの損失:事例2】
2008年10月11日には、倒産したリーマン・ブラザーズに関係するCD
Sの清算価格も、決まっています。

●想定元本$4000億(40兆円)に対し、清算価格は、わずか8.62%で
す。

想定損は、40兆円×(100%-8.62%)=40兆円×93.8%≒37.5兆円と
いう巨額です。これを、どれかの金融機関が引き受けねばならない。

(注)若干の、受け取っていた保険料(プレミアム)でうずめること
はできますが、その分は、わずかです。

▼以上のまとめ

まとめれば、以下の4項です。

(1)米欧を中心とする世界の金融機関の総損失に、見当がつかない。

リスクの高い投資を行っている子会社の、SIV(特定投資目的会社
:巨額の損がある)との連結は、まだ、されていない。しかも、住宅
関連証券の時価は、市場が消えているので評価ができないのです。

IMF(国際通貨基金)は、米欧の金融機関が、今までに発生してい
る不良債権を「賢明に処理した」と仮定して、$6750憶(67.5兆円)
の、新たな資本投入が必要だと計算しています。(英エコノミスト:
08.10.11号 p85) 

しかしこれは、
・08年10月から今後の株価下落での巨額損と、
・今後の、CDSの解消による損失、
・及び、2009年の住宅価格下落を含めば、
 極めて「甘い」見通しに思えます。

金融機関の損失は、「現在進行形」で増えているからです。CDSは、
金融機関が倒産して救済の政府資本を入れば、清算し解約しなければ
ならない条項がついています。

(2)米欧の住宅証券関連の損失は、2009年に向かい、総額が600兆円
になる可能性が、極めて高い。(これは、IMFの見積もりである14
5兆円の4倍です。)

(3)世界の株価時価総額では、10月10日時点ですでに、3000兆円分が
失われている。どこで下げ止まるか、不明です。

(4)元本6200兆円に掛けられているCDS(債務保証保険:相対)は、
相手の金融機関が倒産すると契約が解除され、清算(=損失の確定)
を迫られます。

CDSの清算の際に生じる損害は、見当がついていない。CDS問題
は、わが国の金融危機にはなかった。CDSは、相対(あいたい)取
引であり、交換市場がないため、査定が困難です。

以上のような巨額の損害金額については、正確な計算は、不可能です。
仮に、膨大な計算に時間をかけ、正確を期しても、実際の意味はない。
時間とともに、動くからです。

重要なことは、一刻も早く、帰着点での、概算数字をつかむことです。
それによって予測ができ、対策も打てる。対策が遅れると、金融の損
害額は一層大きくなります。

■2.ヘッジファンドには解約が殺到している

以上の4要素に加え、株・住宅証券・社債などに投資する側では、元本
200兆円のヘッジファンドに、今、解約が殺到しています。

世界のヘッジファンド(と言っても米英が中心)は、2007年12月対比
で、元本に対し16.1%の、表面化した損を抱えています。含み損は、
不明です。
(08.10.11 Financial Timesの巻末統計)

ヘッジファンドは今後、損の拡大を恐れる投資家からの解約によって、
預かり元本が、半分の100兆円に縮小すると見られています。

(注)ヘッジファンドには、商業銀行と投資銀行が、資金を貸してい
ます。

ヘッジファンドに、10倍のレバレッジ(元本に対しての、信用借りの
倍率)があるとして、元本100兆円の消滅は1000兆円の、運用資金の引
き揚げ(=清算)を意味します。

つまり、株・社債・住宅証券、原油・資源・穀物のコモディティ、及
びデリバティブの、投機的な売買をしていたヘッジファンドの運用資
金量が、今後、1000兆円くらいも減るということです。

(注)わが国の株式市場(時価総額が270兆円に下落)では、その60%
の売買は、ガイジンファンドによるものです。ガイジンファンドの、
資金繰りに窮した結果の売りが主因で、国内の買い手はなく、日経平
均が8000円付近に下落した(08.10.10:終値8276円)と言っていい。

今日火曜日は、若干上げるでしょうが・・・

■3.14か月の経緯

▼住宅価格の下落幅の拡大

14か月前の2007年8月9日には、米国のサブプライムローン(残高120兆
円)の、デフォルト率の(未回収率20%)の上昇が問題とされました。

米国FRBの議長バーナンキが見つもった住宅ローンの損害は、15兆
円くらいにすぎなかった。当時、米国住宅の価格調整は、15%程度で
終わるとされていたのです。08年3月には、米国の金融危機は終わった
との説が、政府筋から流された。エコノミトはそれに乗ったのです。

【密約】
投資銀行の5位、ベアスターンズが倒産した2008年3月に、米政府の呼
びかけで、米欧日の間に、ECB(欧州中銀)と日銀がドルを買い支
え、米国に資金供給するという「密約」が買わされていたことが、08
年8月に明らかになっています。

今、米国の住宅価格の下落では、2006年のピークから-40%が想定さ
れつつあります。(公式見解は、当然に、ありません) 

米国の不動産では、3000兆円×40%=1200兆円の、価値下落が生じる
でしょう。住宅価格は、今から20%は下げます。

(注)世界で最も高かった日本の、90年代の不動産価格の下落は、10
00兆円くらいでした。

これに、欧州の住宅価格下落(20%~30%・・・)が加わることは、
前述した通りです。

▼世界の株価の下落

2007年10月時点では、世界の株価(時価総額)はまだ高く、$63兆(
6300兆円)くらいを維持していました。

その後12か月で、時価総額は3300兆円(08.10.10)に低下し、08年12
月に向かう価格は、見当がついていません。

世界の株価は、ファンドの、ポジション解消売りがどこまで続くかに
かかっています。

▼CDSの総損害

CDSの損害は、不明です。元本6200兆円の(低く見て)5%が、清算
による最終損とすれば、それだけでも、310兆円の資金が必要です。

(注)今後、金融危機が落ち着くまでの間、CDSの新規組成と契約
は、消えるでしょう。

株価下落による損の、3000兆円を抜きにしても、
・住宅価格の下落による損が、600兆円相当、
・CDSの解消による損が、310兆円相当、
 合計で、910兆円が必要になる可能性があります。

(注)株価が下落した分は、金融機関・企業・個人の投資及び年金基
金の損害になります。

以上の、本稿の損害見積もりの910兆円(2009年末まで)は、IMFの、
現時点での損害見積もりの約6倍です。

■4.米欧の政府・中央銀行の対策

▼米国政府と中央銀行

米政府は、$7000億(70兆円)を、金融機関の救済資金として、(こ
れから)出すことを、約束しています。とても、この額では足りなく
なることは、容易にわかります。

内容は、
・主要金融機関の不良債権・証券の買い取りと、
・340兆円の残高のMMF(個人預金)の、保護用です。

(注)米国政府が出資することは、まだ決定していませんが、近々、
破綻金融機関へ出資することになるでしょう。

▼英国と欧州大陸

先週末に、英国と大陸欧州では、資金繰り難におちいった金融機関に
対し、次々に、政府による資本注入(出資)の決定(つまり一時国有
化の宣言)が行われています。

欧州では、金融機関間の、短期取引(コール・ローン)についても、
各国政府が保証するという。取り付けが起こると金融が崩壊する預金
も、政府が保護しています。

まとめて言えば、米欧の政府と中央銀行が、金融危機の後始末をしな
ければならない。他に、手段はないからです。

▼すでに100兆円を注いだFRBとECB

米欧の中央銀行(FRBとECB)は、銀行間の短期資金市場が消え
たことを補うために、08年10月時点で、すでに100兆円の短期資金を、
供給しています。

今後、どれくらいの資金を投入できるのか?

物的担保としては「国債と金融機関から買う証券」しかないペーパー
・マネーですから、無限に、紙幣を印刷(実際は金融機関と政府への
貸付)ができます。

(注)今日の時点では、日米欧の中央銀行とG20カ国は、金額に枠を
設けず、必要なら、いくらでも資金を供給するという「青天井宣言」
をしています。日本も、ペイオフをはずし、政府が、預金を全額保護
するという。無際限の、資金供給です。

以下で、中央銀行のマネー供給の仕組みを見ます。

■5.中央銀行はどういった形で、金融機関に、資金供給を行うのか?

わが国日銀の、貸借対照表を見れば、中央銀行のマネー供給の仕組み
がわかります。(08年9月30日現在)
http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/ac07/ac080930.htm

   【資産】           【負債及び資本】
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・金の保有    0.4兆円  ・発行紙幣    75.5兆円 
・現金紙幣保有  0.2兆円  ・当座預金預かり 16.3兆円
・買現先勘定   8.7兆円  ・政府預金預かり  2.5兆円
・保有国債   65.5兆円  ・売現先勘定   11.4兆円
・金銭信託    1.2兆円  ・その他負債    0.8兆円
・貸付金    27.1兆円  ・資本勘定     5.8兆円
・外国為替    8.6兆円
・その他     0.6兆円
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
資産合計   112.5兆円   負債・資本   112.5兆円

(注)現先勘定は、一定期間後に買い戻す(買現先)、または売戻す
こと(売現先)を条件にした債券の、短期での売買残です。

概略でいえば、日銀は、
・日本国債を65.5兆円分買い、
・金融機関への円の貸し付けを27.1兆円行い、
・金融機関へ米ドルの貸し付けを8.6兆円分(=外国為替)行っていて、
 それらの資産を根拠にして、
・75.5兆円の1万円札を発行していて、
・18.8兆円を、金融機関と政府から日銀当座に預かっていると言うこ
 とです。

日銀のマネー供給額とは、[紙幣発行の75.5兆円+当座預金での預か
り18.8兆円=94.3兆円]を言います。

そのマネー供給の裏付けになっているのが、[国債65.5兆円+円の貸
付証書27.1兆円+ドルの貸付証書8.6兆円=101.2兆円]です。

▼マネー発行の担保は、要は、国債

以上の、わが国日銀の例で見るように、各国中央銀行がマネーを供給
するときは
(1)担保として国債を買う、
(2)貸付証書を作成する、
(3)金融機関が持つ証券を買う、ということです。

【信用の根幹】
従って、中央銀行の信用は、
(1)担保として取った国債の信用(=国の財政の信用)、
(2)民間金融機関への貸付証書の信用(=金融機関の財政の信用)、
(3)買った証券の信用、ということになります。

つまり、中央銀行の信用とは、
・国家財政の信用と、
・金融機関の信用が根源です。

しかし、今、米欧の金融機関は、自己資本を失い、信用がない。その
ため、金融機関の間の、短期資金市場(インターバンク・マーケット)
が停止しています。

つまり、金融機関への貸付証書と、金融機関が担保に出す価値が下が
った証券の信用は、薄くなった。

どうしたらいいか。

【国債の信用が根底になる】
(1)財務省が、国の財政の信用を元に、国債(=借用証)を発行する。

(2)中央銀行が、国債を担保に預かり、財務省の当座預金の口座に、
現金を振り込む。

(3)各国の財務省が、自己資本を失った金融機関に、その資金を振り
込む。あるいは増資・優先株・劣後債の発行に応じる。

以上のような、構造です。

▼国家財政の信用

根底になるのが、国が発行する紙の国債(=利付借用証)の信用であ
ることが、了解できるでしょう。

この信用は、国の返済力と利払い力です。

ゴールドという物的担保を裏付けにしないペーパー・マネーの信用の
根源は、各国の、将来の国家財政です。つまり、あらゆる国の国家財
政の信用は、将来の徴税力(=課税力)に依存します。

過去に金融救済のために緊急に使った分を、後で課税ができるのは、
国民所得(=世帯の所得+企業所得)の増加があるからです。つまり
は今後の経済力(=生産力と販売力)の伸びです。

米欧の政府・中央銀行が、「金融危機を避けるためあらゆる朱手段を
とる」ということは、
・国債を増発し、中央銀行に買い取ってもらい、
・そのマネーを、金融機関に貸すまたは増資に応じるという意味です。

中央銀行も、無からマネーを生むことはできない。「国の財政の信用
力」を無視し、無茶に行えば、その国の通貨の信用が、下落します。

●通貨信用は、国債の信用と同義です。

米国と欧州の中央銀行は、以上のような形で、すでに100兆円を、金融
機関に増加供給しています。あと、必要になる数百兆円も、この方法
で集めるしかない。

【重要】海外(日本、中国、アラブ)からも、マネーを集めるとは言
っても、担保に、米欧の国債を差し入れねばならない。あるいは、米
政府または中央銀行の、特別借用証の差し入れが必要です。

■6.究極に問題になるのは、米国経済の信用

米国のGDP(国内総生産=経済の生産力と販売力)は、2007年で$
11.7兆(1170兆円:日本の2.2倍)です。世界のGDP(5500兆円)の
22%を占めています。

この米国は、2007年末で、対外債務を$20兆(2000兆円:GDPの1.
7倍)抱えています。

他方、対外資産は$16.5兆(1650兆円:GDPの1.4倍)です。純債務
が$3.5兆(350兆円)です。

(注1)日本の対外純資産は、2007年末で250兆円です。他の純債権国
は、ドイツ107兆円、中国78兆円、香港61兆円、スイス55兆円、フラン
ス13兆円です。

(注2)純債務国は、大きい順にいえば、米国の純債務350兆円、英国
80兆円、カナダ18兆円、イタリア12兆円・・・です。米英の合計で43
0兆円の純債務であり、世界は、過去の貿易黒字分を、そっくり米英に
貸し付けしていると言っていいのです。

●対外純債務国(米国)が、金融危機の中心というのが、今回の危機
の最大の特徴です。

1929年の大恐慌のとき、米国は対外純債務国でははかった。1997年の
日本の金融危機の時は、日本も対外純債務国ではなかった。

2008年からの米国は、
・減税で18兆円、
・イラク戦費で20兆円、
・医療費や国防費の財政赤字で40兆円、
・金融救済で確定した分が70兆円、
・貿易赤字で、80兆円を使います。

米国に必要な、海外からの資金の流入は、今後1年で、18+20+40+
70+80=228兆円になります。これは、過去の100兆円水準の2.2倍です。

●今後の焦点は、米国が必要とするこの228兆円を、どの国が、米国債
あるいは借用証と引き換えに、供出するか、です。

日本・中国・アラブが、総力を挙げて米国債を買っても、買い切れな
い金額です。

じゃ、米国内で買えるか。それも無理です。米国の金融機関は、今、
国債を増加買いする余力はない。むしろ、政府から資金供給を受けね
ばならない。

【結論】以上の帰結として、年末と2009年に向かい、米ドルは崩落す
ることになります。つまり、米国の政府財政の信用力の低下です。

買いがなく、売りが超過すれば、その国の通貨は当然に下落します。
まずは、$1=80円に向かうはずです。

▼今、ユーロが下げ、米ドルがユーロに対し維持し、円が上がってい
る理由

【ユーロの、対ドルでの下げの原因】
今は米ドルに対し、1ユーロは$1.36に下げています。
ユーロに対しては、ドルが上がった。

この原因は、米国の金融機関が、欧州にもつユーロの株や証券を売っ
てユーロを得て、そのユーロをドルに交換(ユーロ売り=ドル買い)
して、自国での資金繰りに充てているからです。

欧州の株価の下落は、米国と欧州の金融機関及びファンドの、ユーロ
株売りによります。

(注)米国の金融機関とファンドは、前述のように、対外債権を$16.5
兆持っています。これを、売っている。

【米ドルの、対円での下げの原因】
他方、米ドルは、日本円に対しては$1=100円付近に下げています。
(08.10.08)

この原因は、米系ファンドがもつ日本株の売りの金額(円売り=ドル
買い)より、日本の金融機関によるドル債やドル株の売り(ドル売り
=円買い)の金額が大きいからです。

ドル債を売ってドル札に換え、そのドルを円に交換(ドル売り=円買
い)し、自国に持ち帰っているからです。今、日本に資金が回帰して
います。

●今通貨でもっとも強いのが円、次がユーロ、もっとも弱いのが米ド
ルです。

【短期では】
短期では、米国の金融機関とファンドの、資金繰りのためのポジショ
ン解消売りで、米ドルへの回帰(ドル買い)が上回って、ドルが上げ
るように見えるときがあるかもしれません。

【重要】
しかし前述のように、米国は、今後1年で228兆円が不足します。した
がって、3か月、6か月スパンで見た時の、いずれの、世界の通貨に対
するドル安は、避けられない。

米国のドルの信用が下落しているのです。

■7.米欧の資産価格の下落

▼短期では想定ゼロサムだが・・・

株や不動産価格(資産価格)の下落は、一時的な相対(あいたい)取
引では、想定でゼロサムです。

たとえば1500円だった株を1000円で売った人と、買った人がいる。10
00円で売ったAさんは、500円の損失を確定しています。他方1000円で
買ったBさんは、1500円だったものを1000円で買ったので、500円の将
来利益の可能性があるように思えます。

Aさんの確定損500円+Bさんの予想利益500円=想定ゼロサム

こうした、資産取引でのゼロサムが成立するのは、株価が上がったり
下がったりする、普通の時期です。

▼2007年8月以後の、不動産・株の下落はみんなの損

今回のように、長期で全面的に下げるときは、株を売っていない多数
派も、巨額の含み損を抱えます。

ここ1年の、世界の株の、半分の価格への崩落で失われた3000兆円は、
株を売った人・買った人・保有している人・金融機関・ファンドに、
共通する損になっています。新興国の株は、米欧の投資銀行やファン
ドがその過半を持っています。

この損は、米国の住宅、欧州の住宅でも、同じです。米国では、2009
年にかけ不動産で1200兆円、欧州でも1200兆円の損が想定できます。

●米欧の合計の損は、株価で3000兆円、不動産で2400兆円です。合計
5400兆円です。米欧のGDP約3000兆円の、1.8年分に相当します。

●日本のバブル崩壊では、株の時価総額が600兆円から300兆円にまで
下げ、地価は2500兆円から1500兆円に1000兆円下げました。

合計で1300兆円の、資産の損害でした。日本のGDPが500兆円ですか
ら、その2.6年分でした。

【結論】
今回の、米欧の不動産と株バブルの崩壊の規模は、日本のバブル崩壊
の規模に対し、70%くらいと見ていいでしょう。

最終的な資本注入で、米欧の金融機関は、国有化され、あるいは大統
合されます。投機の先兵だったヘッジファンドは、元本が100兆円と半
分に減ります。

原油・天然ガスなどのエネルギーや、金属価格と穀物(国際コモディ
ティ)は、(米国、イスラエル、あるいはロシアが戦争を起こさない
限り)下げます。

●以上のように、各国政府が国債を発行し、中央銀行がそれを買い受
けて、青天井で必要なマネーを刷るため、1929年~1933年のような、
大恐慌は起こりません。

1929年の大恐慌では、米国のGDP(生産・流通活動)は30%も減り、
失業は25%になりました。こうしたことは、今回は、起こらない。

●起こるのは、まずは、米ドルの崩落です。ユーロも下げる。そして、
米国を輸出先とする中国や日本の、商品輸出経済の低迷です。

円や元は、米ドルの協調買いをやめれば、即刻に、上げます。

●そして、今後数年(おそらく3年)の世界は、過剰な生産力をかかえ
、商品価格の下落(デフレ)になるでしょう。米欧の金融機関が自己
資本比率に問題を抱えるため、融資力が縮小するからです。

【波乱】
波乱の要素は、$62兆(6200兆円)のCDS(債務保証険)の清算価
値が、いくらになるかです。

CDSの契約では、相手の金融機関が破産し、政府資本が入れば、清
算しなければならないという条項があるからです。

各国の政府は、今、CDSの想定損には、目をつぶっています。誰も、
計算ができないからです。これがどう決着するか、今はまだ、不明
です。

■8.重要な事実

▼ドル下落に向かう米国債を、どこが買うか?

米国は2009年、2010年にかけて、228兆円もの国債の増発が必要だとい
うことを示しました。

●米国債は、今でも、その94%を、海外が買っています。米国内では、
増発される国債を消化できない。根底の理由は、毎年の、国民の増加
預金(残高は700兆円)がないからです。

【重要】228兆円ものドル建て証券を、どこの国が、買えるかです。買
えなければ、中央銀行のFRBが買うしかない。日本、アラブ、中国
を、懸命に合わせても100兆円分が限界でしょう。欧州は買う力がない。

そうすると、2000兆円の対外債務の米ドル証券が、激しく売られ、米
ドルが崩落し、米国債の金利が、市場の圧力で高騰します。

▼米国世帯の消費は、100兆円が過剰だった

米国世帯の資産とは、株であり、住宅の値上がり(1年で100兆円~20
0兆円の含み利益)でした。

これがなくなると、米国の世帯は、1年で、100兆円くらいの個人消費
を減らさねばならない。米国の個人消費は、約800兆円(GDPの70%
)です。

100兆円は、12.5%の個人消費の減ですから、大きい。
1世帯当たりで1年100万円分の消費減です。
米国の消費者ローンは、大きく減っています。

2009年の米国GDPは、相当なマイナス(-3%から5%)になります
。これは、米国の自動車会社3社を破産させ、中国・日本の輸出工場も
直撃します。米国での、日本企業の生産も、減ります。

米国の貿易赤字を売上としてきた貿易黒字国の過剰生産力(約100兆円
分の生産力)は、今後数年の、デフレ圧力(商品物価の下落圧力)に
なります。

過去、5%の高い実質経済成長だった世界は、2009年、2010年と、GD
Pのマイナスを、経験するでしょう。

see you soon!

【後記】
ゴールド価格は、米ドルの価値と反対の動きをします。今、欧州の中
央銀行が、手持ちのゴールドの売却を、1年で300トンレベル(過去は
400トンレベル)に減らしています。

これが、原油などの資源が下げているのに、金がドル価格で、再び、
$900(31.1グラム)や$1000に近づいている原因です。

来週早々から、パリとロンドンのシティを見てきます。
帰って来て4日後には、米国の流通・物流の視察です。

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届けしています。以下は、08年10月分の目次です。金融経済の問題を
、本質的な部分から解いています。

無料での試読が、最初の一ヶ月間できます。

<398号:緊急特別テーマ:世界金融の壊乱と帰結>
       2008年10月8日分

1.世界は、大恐慌やハイパーインフレには至らない:その代りに米ド
ルが崩落する
2.日本の金融危機(1997年~)とは、その性格が異なる
3.ペーパーマネーの信用の根源
4.国家財政の信用
5.中央銀行のマネー投入
6.市場の金利を決める基本データ
7.仮説:中央銀行のマネー投入の限界は、その国の預金額に対し20%
付近か
8.日銀の前例から判断すれば
9.米ドルの価値
10.国債金利は下げ、金融機関の間のコールローン金利は激しく上げて
いる
11.破産問題は、米国の国家財政

<397号:緊急テーマ第三弾:世界金融の全面崩壊の展開>
       2008年10月1日

【目次】
1.日本は、米欧の金融危機にどう関係するか
2.米国の破産なのに、米ドルがさほど下げていない理由
3.そして日欧の、中央銀行のドル買い=対米資金供給
4.米国金融の状況は、市場の短期資金が枯渇する異常事態
5.米ドルは世界で売られ、日米欧の中央銀行が買い支えている
6.2008年10月、11月には
7.必要政府資金$7000億の、根拠を見れば
8.2008年10月以降は?
9.6200兆円のCDS(債務保証証券)の行く末は?
10.円は高騰する

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