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世界の金融情勢から、理論予知を。 2008.12.01

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 知識源の吉田繁治さんからのメールを転載します。有益な情報が、満載です。参考にしてみて下さい。正確な情報があれば、それを分析して理論で解明する。そのことで、将来に起こることを予測できます。

・・・・・・・・・・以下、転載文です。

  こんにちは、吉田繁治です。10月の下旬、パリから<特別号:晩秋の落日のユーロとドル>をお送りして1か月、西欧の後は、米国西海岸での流通視察でした。

【恐慌へ向かう】
 今、われわれが一生に一回経験できるかどうかの、経済動乱です。月を追い「恐慌」に限りなく近づいています。すでに世界的な信用収縮に発する経済恐慌だと言っていいかも知れません。(注)恐慌の定義はありませんが、実体経済(GDP)の生産・流通・販売が25%近くマイナスし、失業率が、2~3年にわたり20%を超える状況と言っていいでしょう。

【対策】
 ここ1か月、世界の金融で明らかになったのは「米政府・中央銀行(FRB)と欧州政府・中央銀行は、ともに、金融危機が実体経済の恐慌に至ることを避けるため、あらゆる手段をとることを表明した。」ということです。

 今般、米政府は、株価が破産を示す$3を割り決済資金が不足していた世界最大の商業銀行シティバンクの、救済を決定しました。公表不良債権$3060億(30兆円)の、90%(27兆円相当)を政府・FRBが買い取り、加えて、$200億(2兆円)の資本注入を行うと言う。(注)本稿で示す円換算は、ドル価を後で再計算するため、敢えて95.1円(08.11.26)でなく、$1=100円としています。

【(注)予備知識】米国の金融機関では、1株がほぼ$20~$15を割ると、社債が発行できなくなる。格付けが、ジャンク債(ボロ債)並みになるからです。社債には、長期と1年以内の短期があります。1年以内のものをCP(コマーシャル・ペーパー)とも言う。社債やCPが発行できないと、金融機関は、一挙に、翌月の決済資金が不足します。過去の社債(数百憶円、数千億円の規模)の満期(返済日)が次々に来るからです。銀行も融資できなくなります。

 米政府・FRBは、買えば損失を抱えるリスクから、市場での買い手が消えている住宅証券と、カード会社の資産担保証券(ABS:Asset Backed Security)も、$8000億(80兆円)の資金枠を設定し、買いとると言う。

 金融機関の損からローンが降りない。そのため住宅、車、耐久財が売れず、米国世帯が毎日の買い物に使うクレジットカードと消費者ローンも、延滞率の10%超への増加から与信が減っています。シティバンクは、ローン証券の下落で巨額損を蒙っています。

 シティバンクの次は、10月の売上が47%~30%も減った3大自動社会社(GM,フォード、クライスラー)でしょう。倒産すれば、失業は、250万人とされます。放置すれば、米国の実体経済が、いよいよ恐慌に向かいます。

 リーマンブラザーズが倒産した9.15以来、米欧英スイスの金融は、流動性を失い、氷河のように、凍りついています。11月初旬で、米国ではFRBが150兆円、欧州ではECBが100兆円を注いでも、実体経済にマネーが供給されていない。理由は、金融機関の損が毎週、拡大し、MMFや預金も、口座から流失しているからです。
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【1番目の検討】一体、米国の金融機関の損が、どれくらいになっているのか。市場が消えた資産、債券、証券の時価評価は停止されていますから、分からない。しかし政府・FRBの、なんでもありの対策を見れば、埋めきれないくらい巨額であることは分かる。

 対策の金額から、金融機関や企業の、発生した損が推察できます。これを試みます。目的は、今後の経済がどうなるか、通貨はどうなるかを見極めるためです。それに対し論理的な予測を試みます。

 FRB(連邦準備銀行)は、市場価値を失い、含み損が巨額になった証券と金融機関の株を買っています。誰もが不思議に思うことは、「FRBはどれくらいマネーを刷れるのか。」ということでしょう。

【2番目の検討】輪転機と数字には、限度はない。1億ドル札も発行できます。しかし、FRBでも、その信用の限界額を超えれば、ドルの為替価値が、暴落します。(注)世界最大の商業銀行シティバンクに、FRBが(いくらに膨らむか分からない)救済資金を出すことを決定したとき、金融市場では、いずれ全金融機関の不良債権を買い取ることになるFRBの信用悪化を懸念する声が澎湃(ほうはい)と起こりました。FRBも大丈夫なのかということです。本稿ではこれを検討します。

 FRB議長バーナンキは、ヘリコプターマネーとも言う。空からドル札をばらまく。実施形態は異なりますが、FRBが、金融機関に対し今行っているのがこれです。2番目に、これを検討します。これが、後のドル下落で国民負担になる。

【3番目の検討】3番目に、1月14日に就任するオバマ大統領の、最初の仕事になると一部で噂されるようにもなってきた「通貨の転換」を検討します。

 今、金融と経済は、週単位で、深刻化しています。FRBが無限マネーを注いでも、金融機関の損失補てんであり、実体経済には回っていない。しばらくすれば、米国大手小売りの倒産も増えます。ローンで買う耐久財や高額商品店では、決済資金が枯渇するくらい売上を減らしたところが多い。

 実際、後で述べますが、9.15(血の月曜日)以後、FRBが注いだ対策資金(181兆円)の27%(49兆円)もが、金融機関が預けるFRBの当座預金として、大きく滞留しているのです。

 このままでは、米国経済は、09年正月~3月から、実体経済の恐慌に向かいます。FRBがマネーを注ぐ上に、どういった通貨政策があるのか? 3番目は「通貨切り下げ」についての検討です。

 推理小説風に、論理で、筋を追ってゆきます。本稿は、最近の有料版に、若干の書き換えをしたものです。日々、あたらしい情報が現れています。

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<vol.230号:特別特集:世界金融危機はどう決着するか?>
          2008年11月30日号

【目次】
1.シュンペーター流の創造的破壊は痛み
2.米国経済の損失の想定
3.9.15のリーマンショック以後、急激に膨らんでいるFRBの
 貸借対照表
4.中国、日本、アラブは、巨額米国債を増加買いできるのか?
5.金融・経済対策で巨額発行される米国債が海外に売れないと、
 どうなるのか?
6.2008年1月14日~21日に・・・
7.賃金、金融資産、金融負債の変化は
8.新ドル切り替えを行わないとどうなるか?

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■1.シュンペーター流の創造的破壊は痛み

 FRBがマネーを注がねば、旧世代の企業の、死屍累々(ししるいるい)の中から、創造的破壊の痛みの過程で、次世代の企業が浮上し、新しい雇用が生まれます。

 しかしその過程では、恐慌的な収縮と、20%以上の失業者を招くため、政府は闇雲にそれを防止しようとする。そのため、FRBは、数百兆円ものマネーを刷り、米$の価値(信用)を悪化させるのです。これが、闇雲の意味です。

 例えばわが国では、ダイエーが政府による約5000億円の借金のカット策と、資産売却で延命しています。ダイエーが倒産していれば、失業と損が生じても、その地域の売上分(当時約4兆円)は、他の小売店のものになり、それによって、すぐ後に、他の企業の健全な雇用と、取引が生まれたでしょう。

 ダイエーがなくなっても、地域消費がなくなるのではないからです。そうした方法が、後の日本経済のためにはよかった。これが、経済のダイナミズムでの、世代交代の創造的破壊です。しかし目先の失業、金融機関の損、納入業者の損を政府と世論は、恐れました。

 当時の竹中大臣が言ったToo Big To Fail(大きすぎて倒産させられない)は、将来の経済のためには、誤りになる。米政府は今、その対策をとっています。あまりに広範囲だからです。今も、来年も、でしょう。

▼堕ちた経営責任

 米議会では、フォードのCEO(代表執行役員)に対し、「$2100万(21億円)の年俸は、政府と国民から救済を受ける企業にしては、高すぎるのではないか。どう思っているか。今後もその報酬か?」という質問があった。(TV放映と日経新聞による)

 フォードの社長は「今後も、その額が適当だと考える。」との回答でした。聞けば、その無責任さに唖然(あぜん)とします。日本人なら、伝統的な倫理から、ハラキリの責任意識はある。米国の、90年代後期からの金融経済は、妙な人格を作っています。

 救済を受ける金融機関のトップ(ゴールドマンサックスやモルガンスタンレー)も、ほぼ同じ発言をしています。経営者の倫理と責任は地に堕ちています。こういうトップだからこそ、金融危機が生じ、企業が破産したと言えます。(注)全員ではない。スイスUSBのトップは、50億円の過去の報酬を、返金することを表明。

 上記の言葉は、自分の責任ではないという意味。じゃ誰の責任か。金融危機だということになる。その金融危機を招いたのは、あなたの、過去の意思決定ではなかったか? 

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 金融危機は、地震のような自然現象ではない。経済現象は人為です。経済は人の意思決定が作る。要は、借金での投資と投機の、行きすぎです。

 CDS、CDO、ABS、MBS等のデリバティブ(保険)に、責任を転嫁するのか。それも誤りです。デリバティブを使うことを認めた責任がある。こうした金融機関が、最終的には、国民の負担で救済される。

 破産する大金融と巨大企業の米国人トップに、誇りはないのか?

 今は、外貨準備を$2兆(200兆円)貯めた中国を、「中国が世界を救う」とおだて、大量発行される米ドル国債を買ってもらおうとしています。

 日本とアラブの政府が、大きく増加買いする余力を、失ったからです。

■2.米国経済の損失の想定

 米欧で、次々に、今週の金融破産を避けるため、救済策が発表されています。一体その総損失は、現時点でいくらになるのか? まずここを検討します。

 政府・FRBが決めた金融・経済対策の総額で、その損が推計できます。以下のような内容です。($1=95円ではなく100円換算)

【政府・FRBの対策の数々:10月15日時点】
(1)上院議長ペロシの減税対策30兆円 (2)財務長官ポールソンの銀行国営化資金25兆円 (3)GM等の救済資金2.5兆円 (4)ペロシの州政府救済15兆円 (5)政府の経済・金融救済策 70兆円 (6)ベアスターンズ資本注入2.9兆円 (7)ファニーメイ・フレディマック国有化20兆円 (8)AIGの国有化 11.5兆円 (9)住宅ローン救済30兆円 (10)ローン会社救済0.4兆円 (11)JPモルガンチェースへの資金手当て 4000億円(12)FRBへの借入オークション20兆円枠 (13)不況対策基金 5000億円 (14)住宅証券買取 14.4兆円

【250兆円】以上の対策の、政府・FRBの資金合計で、約250兆円が必要になります。

【250兆円】これに、1億世帯の想定損失(250兆円:10月15日時点)が加わるとすれば、合計で約500兆円です。以上は、10月15日時点の米国です。

 今後、2009年夏ころまでの対策では、500兆円を、大きく超えます。例えばGMとフォード、クライスラーでも、2.5兆円では足りない。10兆円を超えるかもしれない。住宅証券化会社、ファニーメイ・フレディマックの住宅証券での損失額も、20兆円よりもっと大きくなります。

【追加の105兆円】08年11月25日では、(1)上記住宅ローン証券と、(2)アメックス等のクレジットカード会社が、債権担保で発行している証券(ABS)の買い取りで80兆円、(3)更にシティバンク救済で25兆円が加わっています。

〔注:予備知識〕ABS(資産担保証券)は、クレジットと車のローン等の回収権を、裏付け資産とするデリバティブ型証券です。クレジットカードの延滞率が10%を超えたため、ABSが市場で売れなくなり、カード会社の資金も枯渇したのです。今週からのクリスマス商戦では、米国小売り業は、普通の月3ヶ月から4ヶ月分を売ります。クリスマス商戦での売上減少が確定すれば、実体経済は、いよいよ恐慌めいて来ます。

【合計で925兆円】以上を合計すれば、500兆円(10月15日時点)+(11月で)125兆円+アルファ(1か月で50兆円~100兆円相を追加×4か月≒300兆円)=925兆円

 これを少なく見ても、金融と経済の救済のために必要な、米政府・FRB資金は、700兆円くらいになるでしょう。しかし、以上で終わるかと言えば、そうではない。

〔注:予備知識〕英国・スイスを含む欧州でも、金融と企業救済で約500兆円が必要です。欧州の金融機関は、前号で示したように、自己資本に対するレバレッジ率(信用倍率)が30倍~50倍と、米国より高い。オイルマネーと世界の貿易黒字がユーロに集まり、1ユーロ=160円の、ユーロ高を作っていたためです。

【上記と他に、回収保証のデリバティブの損失】
CDSが、社債、証券、債権の回収を保証する元本が、今5700兆円も残っています。

 これは、プレミアム(保険料)をもらい、回収を保証している金融機関(その代表がAIG)が倒産するか、または救済の政府資金が入れば、裏付けとなる資産を時価評価し、契約を解消しなければならない。過去は、この1%や2%のプレミアムが、保証する金融機関の過去の巨額利益になっていたのです。

 清算の総損失を、保証額の5%とすると、5700兆円×5%=285兆円が必要です。

 これを加えれば、米国政府・FRBに必要な資金は、1000兆円の規模になるでしょう。米国のGDPは、1171兆円(08年9月時点)です。その85%に相当します。

 日本で言えば、GDP510兆円の85%、つまり433兆円(国民1人当たり341万円:世帯当たり866万円)を、政府・日銀が拠出しなければならないことに等しい。これが「経済的」に可能なのか?

 08年に45兆円を出した財政赤字の米国政府に、税金の収入で余るマネーはない。(1)国債を発行し世界に売るか、(2)米国FRBに買わせ(あるいは担保として預け)マネーを印刷させ、政府が借り、それを使うしか方法はない。

 従って、いずれにせよFRB(米国中央銀行)の印刷マネーです。ところで日々変わっているFRBの、直近のB/S(貸借対照表)は、どうなっているのか? 次は、FRBの信用悪化の検討です。

■3.9.15のリーマンショック以後、急激に膨らんでいるFRBの貸借対照表(B/S)

 以前もとりあげた、FRBのB/Sの、11月5日分を見ます。煩雑(はんざつ)なので単純化し、16カ月での変化を大きく見ます。(FRB資料より:新生証券作成分を簡略化:週刊エコノミスト08.12.02号)

 FRBがどんな貸付をしているか、それが、最近でどう増減したかを示します。この比較B/Sは、その各勘定の増減が、FRBの資金運用を明らかにするものです。

         〔金融危機前〕    〔直近〕
【資産の部】   〔07.7月時点〕〔08.11月5日〕 〔増減〕
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・金保有         5兆円   5兆円      0
・米国債の保有     79兆円  19兆円    60兆円減
・金融機関への貸出金    2兆円  97兆円    95兆円増
  うちTAF      0  (30兆円)   (30兆円増)
  うち公定歩合での貸付 0   (7兆円)   (7兆円増)
  うちCPFF     0   (24兆円)   (24兆円増)
  その他貸付           2兆円 (36兆円)   (34兆円増)
・その他の貸付金     4兆円  90兆円     86兆円増
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【信用供与額合計】   90兆円  211兆円    121兆円増

〔注:予備知識〕TAF=期間入札金融=金融機関からFRBへの入札による担保付き貸付 :CPFF=金融機関や企業が発行する短期社債(コマーシャルペーパー)のFRBによる買い上げ

以下は、上記資産の増減の解釈です。
(1)国債売却60兆円:FRBは、金融危機後の16カ月で、保有していた米国債を60兆円分、欧州中銀・日銀・中国を含む海外と、国内市場に売り、まず60兆円の現金を調達しています。これを示すのが、上記の資産における、「保有国債の減少60兆円」です。

(2)95兆円の貸付増加:そして95兆円を、危機状態の金融機関に増加貸付けし、

(3)他の貸付も、86兆円分増えています。

●両者の合計で、主に金融機関に181兆円の資金供給、つまり信用供与をしたことになる。(11月5日時点)

 11月30日時点では、FRBによる資金供与額は、200兆円を超えているでしょう。他に、デリバティブがらみの、簿外の貸付もあるはずですが、それは不明です。

 FRBの貸付金が、急に150兆円も膨らんだのは、9.15以後です。

[今後は?]FRBの貸付金は、前記の金融と大企業救済のため、今後も、毎月、50兆円から100兆円の規模で、膨らむことになる。特に、金融機関と企業に、資金が必要になる年末には、増加貸付が200兆円も追加で膨らむかもしれません。

 2008年3月には、FRBからの総信用供与額は、今の2倍の400兆円を超えるはずです。一体この資金を、FRBはどう調達するのか?

その資金原資を示すのが、上記資産(信用供与額)に対応する、B/S(貸借対照表)に記された負債です。

         〔金融危機前〕    〔直近〕
【負債の部】   〔07.7月時点〕〔08.11月5日〕 〔増減〕
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・$紙幣印刷発行   81兆円    86兆円   5兆円増
・リバースレポ取引   3兆円    10兆円   7兆円増
・預金預かり      2兆円    110兆円   108兆円増   
    
 (うち財務省)  (0.5兆円)  (58兆円) (57兆円増)
 (うち準備預金) (0.6兆円)  (50兆円) (49兆円増)
 (その他預金)  (0.7兆円)  (3兆円)  (2兆円増)
・その他負債      4兆円    5兆円    1兆円増
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【FRB負債合計】  90兆円   211兆円   121兆円増

以下はその意味です。

(1)通貨発行は86兆円:金融危機の前のFRBは、資産としては米国債を買い受け、それに見合う額のドル札を印刷・発行していました。ドル札の額は、5兆円増えただけで86兆円の残高であり、ほぼ変わっていません。

(2)リバースレポ取引とは、政府から国債を借りる取引です。これが7兆円増えていますが、これも、多額ではない。

(3)もっとも増えたのは、・政府預金の預かりの、57兆円増と、・金融機関が、FRBの当座預金に預ける準備預金増の49兆円です。

 両者とその他預金の2兆円増で、合計108兆円も、FRBへの預金が増えています。金融危機の前には、これはほとんどなかった。これは何を意味するか?

●まず、米政府からの預金の57兆円の増加です。前記のように米政府は、1年48兆円の財政赤字(07年度)であり、政府の金庫には余裕資金はない。

 これはどういうマネーかといえば、(1)米政府が国債を印刷し、(2)国内と海外の政府と中央銀行(中国、日本、アラブ)に頼んで売って調達したドルを、(3)FRBに預けたものです。つまり、米政府による、国債売りです。FRBに資金源がないので、政府が特例国債を発行し、売ったと言っていい。

(4)次は、金融機関の、FRBへの準備預金の49兆円の増加です。米国の金融機関は、倒産するくらいの損失で、マネーはないはずなのに、49兆円もFRBに預けています。これは、どういった意味か?

 FRBは、今、特例として、金融機関がFRBの当座預金に預けるマネーに金利を付けています。目的は、金融機関の損失を一部補てんする利益を、安全に、与えるためです。

(5)金融機関は、FRBから緊急で借りたマネー(181兆円)のうち、その27%(49兆円)を、とりあえずFRBに預け、金利を稼いでいると言っていい。これが、金融危機を典型的に表すことです。金融機関がFRBから緊急に借りた資金を、民間経済で運用できない状況です。

以上がFRBの資金源(負債)です。

●【要約】
単純化すれば、FRBの資金源は、
・紙幣発行が[86兆円]
・米政府が国債を売ってFRBに貸したマネーが[58兆円]
・金融機関がFRBから借り、一時的に当座預金に預けているものが[49兆円]です。

▼ぺーパーマネー時代は、国債だけが中央銀行の資金原泉

 なお、紙幣発行の信用の裏付けは、米国債でなければならない。FRBには、(あるとされるが疑わしい)5兆円分のゴ―ルド以外に、めぼしい資産はないからです。そうすると、FRBの資金源は、ほぼすべて、米国債だということになります。

【(注)予備知識】こうした国債に依存する、中央銀行のB/Sの構造は、日銀も同じです。国債保有に見合う紙幣を、発行している。日銀に、資産があるわけではない。欧州を含む、世界の他の中央銀行も同じです。

●1971年以後(ニクソンの金ドル交換停止)のペーパーマネー時代の中央銀行は、米国FRBと同じ構造で、国債依存です。

 1971年までのドル金本位の時代は、国債に変わるものが、ゴールドの準備率でした。ゴールドの準備率を8%とし、中央銀行の金保有が5兆円なら、その12.5倍の金兌換紙幣(62.5兆円)が、マネーの発行限度になっていました。金が、マネーの信用、つまり価値の裏付けでした。
(注)日本や米国以外は、1971年以前もペーパーマネー。ドルと$1=360円で交換してはじめて、金本位だったからです。

【(注)予備知識】準備率(リザーブ)とは、発行した兌換紙幣(金への交換可能紙幣)が、全部、一斉に、金に交換を要求されるわけではないという前提に基づくものです。銀行の原理が、この準備率です。

 原理を言えば、預金が一斉に引き出されることはないという前提で、銀行が成り立つ。銀行がもつ現金を、準備金と言い、日本ではこれを日銀当座預金に預託します。しかし米国では、08年9.15の金融危機の前には、FRBに準備預金を積むことはなかったのです。各銀行が、自分で準備金を持っていた。

●今、各国中央銀行の信用の裏付けは、国債しかない。従って、国債が下落する(金利が上がる)すると、その国のマネーの信用が、下落します。国債の信用が、国家の信用だからです。

【2000兆円の負債国:米国という特異性】
 特に、資金(国債売却)を海外に依存し、2000兆円の総負債国(米国債、米国の住宅証券、米国企業の社債、米国株の海外所有)を抱える米国では、米国債の信用の低下は、海外のドル債売り、つまりドルの下落という形で現れます。

 じゃ今、米国債は、どう売られているか。買われれば、信用が高いことになる。米国債の発行残は、長短合わせて約$10兆(1000兆円)です。このうち、ほぼ600兆円が、国内所有です。400兆円を海外が買っています

●ここで重要なことを言えば2007年の国債の新発分は、海外が94%を買っています。その理由は、2007年、2008年と、増加発行された国債を、米国内で消化する能力がなくなっているからです。

【結論】
 米国FRBの資金源は米国債しかない。従って、今後、金融・経済対策としてFRBが出すマネーは、その全額を、米国債の発行と海外への売りに依存することになります。2007年以後、資金が枯渇した米国内で消化された国債は、6%に過ぎないからです。

【次項への展開】
 米政府・FRBが、(政府策で約束された)金融・経済対策のために、前記の1000兆円が必要とすれば、これを、どの国が買えるのか? 

 1000兆円でなく、その70%の700兆円としても、今後6か月の間に、毎月100兆円以上を、どの国が買えるのか? ここが、米政府とFRB及び金融機関にとって、最大問題になります。

【重要】2008年末と2009年に向い、巨額に発行される米国債が、海外に売れなければ、FRBを通じた金融機関と経済への資金供与は、経済原理的には不可能です。

【(注)予備知識】その点、日本の政府部門の債務1000兆円は、1500兆円の個人金融資産があったため、国内で消化されています。ゼロ金利策をとって、金融機関と企業に300兆円~350兆円の所得移転が行われたことは、前号で示しています。日本は世帯が800兆円を預金し(銀行・郵貯)、生命保険(民間・簡保)と年金基金も増えていたので、国債を金融機関・郵貯・簡保・年金基金が買えたのです。あらゆるものには、資金源が必要です。

●【重要】以上の「米国債を海外が買わない、むしろ売る」危機こそが、今、米政府当局(財務省とFRB)の幹部が、外部に言わず、共有している恐怖です。

問い:「今後、ほぼ毎月必要な、100兆円分発行する米国債を、中国、日本、アラブが買ってくれないと、どうなるか?」 次に、これを検討します。

■4.中国、日本、アラブは、巨額米国債を増加買いできるのか?

▼中国が、ドル債を増加買いできるのは1年20兆円

 中国は、約20年の、貿易黒字がたまった外貨準備を200兆円分持っています。しかしこのうち60%はもともとドル債(国債・社債・住宅証券)です。中国がもつドル債を売って、ドル債を買っても意味はない。

 そしてほぼ30%がユーロ債です。これを売って、ドル債を増加買いすることもできない。ユーロ債を売りドル債を買えば、米国に匹敵する中国の輸出先であるユーロが暴落します。これもできない。

 中国の貿易黒字は、08年10月で、3.5兆円です。輸出が12.8兆円、輸入が9.3兆円だった。これを1年に延長すれば42兆円になって、そのうち約60%(25兆円)が、ドル債の増加買いの余力になる。

 しかし、米国の急激な景気後退(=店舗売上の増加の停止、及び減少)から、11月以降の中国の対米輸出は、急減します。中国にとって、2009年は「外需の増加は期待できない。むしろ減る。」これは確定でしょう。中国製品を多く並べる店舗の売上(1年400兆円:100万店舗)の一部を、実地に見れば分かる。

 ファッション衣料、家電、住関連耐久財は、ひどい。売れていのは、ほぼ米国産の、必需の安い食品です。欧州も似ています。

 物価インフレを引いた実質GDPがマイナスに向かうとは、店舗売上の急減です。商品価格インフレが5%なら実質GDPの2%マイナスであっても、店舗売上は平均で7%(0%からマイナス14%に分布)になります。1年14%のマイナスが続けば、企業は倒産するでしょう。今の米欧では、金融機関からの融資が出ないのですから。

【結論】2009年での、中国のドル債の増加購入は、中国政府が米国に約束した20兆円程度が、上限です。貿易黒字が増えなければ、中国もドル債の増加購入はできません。

 他の方法は、中国政府が持つ$1.2兆(120兆円)の、ドル債の、米国政府への貸与(貸付)です。

 しかし、これを中国が行うとは思えません。逆に中国は、ドル債を持つことを対米への、政治的な圧力に使う。外需依存経済の中国は、失業を増やさないため元を安く維持したいからです。(注)中国の、輸出工場の3分の1は、今、操業停止に近い。

▼日本が、ドル債を増加買いできるか?

 麻生政権は、米国が支配するIMFに、「新興国の金融危機、通貨危機を回避するための資金」として、10兆円分のドル債を拠出します。IMF(国際通貨基金)の性格を知らず、先見性のない哀れな愚策でした。

 わが国政府・日銀には、もう米国債を買う資金余裕がないため、財務省がもつ外貨準備(100兆円)のうち、10兆円分を貸すことにした。

 日本政府は、2009年は大きくなる財政赤字と、ゼロ金利から離脱した国債金利、及び財源を国債に依存する経済対策のため、09年は40兆円~50兆円を超える国債を、発行しなければならない。これは、日本政府が使います。米国のために別の国債を発行し、その資金でドル債を買う余裕はもうない。

(注)特別会計の埋蔵金(剰余金)は、特別会計に含まれる年金基金(170兆円)、及び外貨準備(100兆円)がもつ米ドルの約20%下落と、内外の株価の40%下落でほとんど消えています。これらは、現金ではなく、相場で動く米国と日本の国債、円とドルの証券や株になっているからです。この埋蔵金も、株価下落と対円のドル下落でなくなってしまったのです。

 米国の当局は、日本には、もう余裕がないことを知っています。この国のマクロ経済と資金循環を、少し分析すれば、2006年以後は、日本がドル債を買う最大手国ではないことは、誰の目にも明白です。そのため、今は、「中国マネーが世界を救う」とおだてる。

 しかしもともと、新興国の金融危機、通貨危機がなぜ起こったかといえば、英米系ファンド投資銀行の、2007年末からの新興国の国債・債券・証券・株の売りからです。(注)後述するように米国は、対外債権(株、証券等)を1650兆円(07年末)持っています。

 このため、新興国の通貨は30%~40%も対ドルで下落した。金融危機の米ドルが、ユーロと新興国通貨に対し上げたのは、この米国の、対外債権(1650兆円のうち100兆円か?)の売りのためです。この売りで新興国の株価は、50%~70%も暴落した。中国は70%以上下落です。日本の株も日本の株も約40%下げています。

 新興国の金融危機と通貨危機は、英米系ファンドと米系投資銀行の、巨額損での資金繰りの必要が、引き起こしたものです。

(注)日本の株価下落も、同じです。個人は、1兆円分余分に買った。英米系ファンドは、それ以上に売り越した。これが、日経平均が8000円付近に40%も下げ、日々激しく騰落している理由です。

 IMFが、日本政府が供出した10兆円を新興国に貸しつければ、どうなるか? 

 英米系ファンドと米系投資銀行は、これを幸いにあと10兆円分、安心して、新興国への投資を引き揚げます。つまり日本がIMFに貸し付ける10兆円は、英米系ファンドと米系投資銀行に、資金供与したのと同じことになる。哀れなのは、日本の国益です。この10兆円は、決して戻ってこない。

 ドル債の買い手だった、日本の機関投資家(保険と年金)は、今、ドル債を買う余裕はない。個人の外債への投資信託(30%~50%損)も同じです。解約が多く、とても買う資金はない。むしろ、大挙し、ドル債の売りです。

【結論】以上から今も今後も、日本が過去のようにドル債を買える状況はない。2007年までは1年平均で40兆円も買ってきたのですが・・・

▼原油が50ドルに下落したアラブは、ドル債を増加買いする余力はない。

 世界で300兆円を超えると持て囃(はや)されていたSWF(資源国と貿易黒字国の政府系ファンド)は、07年10月をピークとする世界の株価下落(40%~60%:総損害3000兆円)によって、顔色を失っています。アラブ諸国の、SWF100兆円も、同じです。巨額損失を蒙(こうむ)り、ドル債を増加買いするどころではない。

 ドル債やCDSを5兆円買い、1.5兆円(30%)を超える含み損を出しているわが国の農林中金より、アラブ系ファンドの損はひどい。運用責任を問われています。

 $200になると囃(はや)されていた原油は、$50に下落した。国営石油会社が原油高騰で、大番振る舞いした財政と公共投資のため、直近では、アラブは財政赤字に転落しています。アラブも、ロシアも、米国債を増加買いする余力を失っています。

【結論】日本とアラブには、ドル国債を増加買いする余力はない。日本を追い抜いた貿易黒字国中国でも、1年20兆円買いが天井です。

 ドイツも国内の金融対策が米国と同様に忙しく、ドル買いどころではない。スイスの大手銀行は、金融破産に近い。そうなると、米国債は、今後、海外には売れない。逆に、ドル安の損を恐れる売りがあるでしょう。

■5.金融・経済対策で巨額発行される米国債が海外に売れないと、ど  うなるのか?

 米政府は、どうやっても、金融・経済対策で、今後、数百兆円の国債発行が必要です。マネーは、そこからしか出ない。しかし、今後、海外が買ってくれるのは、わずかです。逆の、ドル債売りの可能性(確率)がずっと高い。

 最後は、米ドルの信用を落とす手段、・米国債を刷ってFRBに渡し、・FRBは、通貨管理から輪転機になって、・毎月100兆円近いドル札を刷る(=政府口座に振り込む)しか方法がなくなる。これは、FRBの信用悪化からの、ドルの暴落を意味します。

 米国金融機関と企業の決算とが重なり、巨額資金が必要な08年12月末に向っては$1=80円に下落し、2009年は$1=60円に向かい下げると予測する理由が、これです。もうドル債を、海外が買う余裕がなくなったのです。

 3大赤字(財政赤字、貿易赤字、世帯の赤字)の米ドルの価値が維持されてきた理由は、海外が1年100兆円のドルを増加買いしてきたからです。

 90年代から2000年代初頭までは、中国、アジア、日本でした。原油が高騰した2000年代はアラブが加わった。アラブは、ユーロ経由でドル買いしたので、原油高騰につれ、ユーロも高騰していたのです。

 2009年は、中国が言うドル買いの20兆円しかない。そして、日本の外貨準備(100兆円)のうち、幾分かを米国政府に貸すしかない。

(注)日本政府は、これをやろうとするでしょう。しかし10兆円のIMFへの貸与でも、世論(輿論:よろん)では、なぜそんな無駄なことをするのか、100兆円の外貨準備は、ドル債を売り、急速に景気が悪化しGDPがマイナス成長で失業が増え、賃金も下がる国内経済のために使えという当然の反応です。政府(財務省)も、これを無視できません。

・米国債を刷って、FRBに渡し、
・FRBは、通貨管理機関から輪転機になって、
・毎月100兆円近いドル札を刷ることが、確定したように思えます。

 しかしこの策は、預金が少なかった時代の日本の戦時国債(=金融機関が買えないので日銀引き受け、個人マネーや貴金属は鉄に至るまで国家へ拠出:国家総動員令)のように、ドルの通貨信用を下げるものです。

 米ドルの暴落(世界がドル債を一斉に売り、米国の市場の金利が高騰する)の恐れがある。

●これが起これば、ドル債が売られて下落し、結果として米国の市場金利が高騰し、米国の実体経済は、確実に、恐慌に向かいます。

 欧州の投資資金が一斉に引き揚げた極北の小国、アイスランドのような、恐慌になるのです。(かつては漁業国:1年前まで金融国で、人口30万人の1人当たりGDPでは、一時は世界5位でした)

 漁業をしていた人が、金融ブームで銀行のマネジャーになり、ローンで、1億円に上がっていた家を買った。今年になって、銀行がつぶれた。ロシアが、アイスランド支配を目的に、資金貸与することになった。銀行員は、漁船に戻った。いずれ自己破産する・・・TVで言っていました。

 去年まで、数千万円の決算ボーナス(利益配当)をもらうのはザラだったウォール街は、今、瀕死(ひんし)状態で、5万人、10万人の金融失業があふれる。隠れた失業の数を、数えることもしない。意味がない。

 今日は感謝祭。1か月のロングランの、クリスマス特売が始まります。小売業は、これから1ヶ月で、普通の月の3倍から4倍を売る。売上は確実にマイナスで、小売り企業の多くが赤字に転じます。

 2001年の9.11よりはるかにひどい。あのときは、米国人の愛国心が萌(も)えた。敵はテロだった。今、敵は何か。デリバティブか・・・強欲か。

 政府は、財源の目途がない金融・経済対策を言う。しかしマネーは、一向に回ってこない。金融機関の損失補てんに、滞留している。金融機関は、貸す余裕がない。

■6.2008年1月14日~21日に・・・

 米国の金融関係の高官、FRB、政府の財務関係の一部高官は、以上の事情を、よく知っています。

●政府とFRB内の(非公開の)議論では、海外がドル債を買わなくなった後の対策が、検討されているはずです。

 サブプライムローンの帰結が、金融危機になることは、2005年ころFRB内部での議事録にもなっていたことが、竹森俊平氏の『資本主義は嫌いですか。それでもマネーは世界を動かすで明らかです。グリーンスパン時代のFRB幹部は「サブライム危機への認識を共有していた。」 このことからも、今、当局の高官は、「米ドル債を、海外が増加買いしなくなった後の対策」を検討しているはずです。

 オバマ氏は、2009年1月14日、聖書に手を置き、大統領への就任式を行います。

 資本主義の行方が、とは言わない。そこまで大袈裟ではない。1971年、時の大統領ニクソンは、世界の誰にも事前には言わず、突然「金ドル交換停止」を発表しました。それに似たことを推測します。

 米国は、主要国の中央銀行を集め、説明会は行った。「方針は決定した。説明の必要はない。質問には答えない。実行があるだけである。」木で鼻をくくるものだった。

▼以下は推測です:(注)あくまで、論理からくる推測です。

 どんな策か? 米国を350兆円の純借金(=対外債務2000兆円―対外債権1650兆円:07年末)から解放する策でしょう。

 もうこれ以上、海外に借りることはできない。海外が、米国債を買わない。米ドルは、世界にあふれすぎた。海外政府が持つ外貨準備だけでも600兆円ある。

●「1月21日以後、米政府は、FRBを事務局に新ドルを発行し、旧ドルとの交換比率は(例えば)2:1とする。」 説明はそれだけでしょう。1971年のニクソンと同じように、実行があるのみと答える。

 新ドル換算では、米国の対外債務(借金)は1000兆円に減ります。日本の対外債権610兆円(主は米国の対外債務:07年末)も、新ドルでは、305兆円と半分に減ります。

 他方、米国の対外債権は、1650兆円(07年末)です。

 日本に対しては、360兆円の対日債権(07年末)です。日本株を含む証券に221兆円、その他証券投資で118兆円ある。これらは円建てです。従ってこれは減らない。(注)07年末データは財務省。株安で40兆円くらい減っていますが。08年データの発表はまだない。

 今、株価の下落後の時価で300兆円の対日債権があるとすれば、この価値は変わらない。そうすると、以下のようになります。

 [対日債権 300兆円-対日債務305兆円に減価=対日純債務5兆円]

 250兆円(07年末)もあった対日純債務は、一夜で、5兆円に減る。得をするのが米国で損をするのが日本です。こうした、通貨切り下げができるのが、基軸通貨の特権です。

 この対日債務と同じように、米国の2000兆円の対外債務が、1000兆円に減る。しかし1650兆円(07年末)の対外債権の実質額は、減らない。これが世界の株価下落で、650兆円分(60%)時価が下落していても、対外債権は1000兆円です。

[米国の対外債権1000兆円-対外債務1000兆円に減価=対外純債務ゼロ]となって、1月21日以後、バランスします。

 海外は、1.21以後2000兆円が、1000兆円分に減った米ドル債券を売っても、1000兆円でしかないので、保有するだろうと言えます。(注)1.21はあくまで、論理的な推量です。

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■7.賃金、金融資産、金融負債の変化は、米国の賃金や金融資産、金融負債はどうなるか?

 通貨単位を切り下げる「デノミ」とは異なります。旧ドルで$5万/年の賃金は、新ドルでも$5万に維持するからです。

 世帯の$30万の住宅ローンは? 新ドルでは、$15万に半減します。$8万の預金は? 新ドルでは、$4万位に減る。家計の純債務は、1月21日以前の[ローン負債$30-預金$8万=$22万]から、[ローン負債$15万-預金$4万=$11万]と、$5万の賃金に対し半分の重みに減ります。

 これなら、$15兆(1500兆円)の負債を抱える米国の5000万世帯(世帯平均3000万円)も、ローンを返済できるでしょう。ローンが返済できないことが、今回の金融危機の根底にあった。これが、2:1の交換率の新ドル発行で解消します。

 他方、金融資産を負債より多く持つ世帯は、損をします。民主党は、かつて日本社会党に似たところがあります。支持は、有色系とワーカー、インテリ層が多い。富裕者の優遇をしてきた共和党とは、異なる。

 米国の政府債務1000兆円も、500兆円と半減します。

 米国の世帯は、金融資産の最大は、預金でなく下がった株です。株はどうなるか。一旦はショックで暴落します。しかし、米国が対外借金から解放され、住宅ローンが支払われ、世帯も1500兆円(うち住宅ローンは1200兆円)の借金から解放されることが分かって経済は一転し、好転に向かうとなると、その後は、上げるでしょう。(注)2009年の最初は、金ドル交換停止のときのような混乱です。

 企業にとっては、社債の負債2500兆円が、一挙に1250兆円に減ります。

【まとめ】
・米国の対外債務       2000兆円→1000兆円に減る
・米国世帯の借金       1500兆円→750兆円に減る
・米国企業の負債(主は社債) 2500兆円→1250兆円に減る
・米国政府の負債       1000兆円→500兆円に減る
・米国GDP         1170兆円→1170兆円で変わらない

 賃金は1:1で新ドルになるので、賃金が80%部分を決める物価もさほど変わらない。賃金で買う小売りや車の売上も維持されます。企業の借金も半分に減ります。

 金融機関の債務超過も、資産より、借金の過多です。2:1の交換率の新ドル発行で、過去の債権・債務が、同時に半分になれば、救われます。借金(国債)が500兆円と半分になった米国政府が、その後、ふんだんに国債を発行し、そのマネーで資本注入ができます。行うのは、大統領令の発布だけです。

【円との関係】
 円との関係はどうなるか? 米国が2000兆円の対外債務から解放される。米国企業と世帯が[徳政令]再興するとなると、旧ドルは$1=50円になっても、新ドルは$=100円付近で落ち着くかもしれない。

【対米輸出価格は?】
 日本や中国の輸出価格は、新ドルで売ることになって、米国の新ドルの賃金では価格が変わらない。輸出はできる。米国の輸入価格は新ドルになって、変わらない。

以上のように、負債を半分に減らす徳政令が、旧2:新1の交換率での新ドル発行です。

■8.新ドル切り替えを行わないとどうなるか?

 こうした新ドル発行を行なわなくても、2009年は世界がドル債を買わないことから、いずれ$1=60円に向かうでしょう。つまり、マーケットによるドル切り下げです。

【結果は米国の恐慌】
 ただし、こうした、市場でのドル売りによるドル切り下げでは、米国の世帯の負債、企業の負債、政府の負債は救われません。金利が高騰し、米国経済は奈落に落ちる。それよりも、以上のような構造の、新ドル発行に、傾くのではないかと思えます。(注)どんな帰結か、あなたも予測してみてください。

【論理的な推測】
 以上は、あくまで、論理による推測です。日本にとっては、305兆円の損をする新ドル発行は、ないほうがいい。しかし、2009年中にいずれドルが切り下がり、$1=60円に向かえば、ほぼ同額の損をするので、同じことになります。

 日本政府は、他に先駆けドルを売り、以前提案した、ゴールドを買うことはできないからです。

 $1=60円の円高なら、輸出企業は壊滅的になる。しかし、新ドル発行で新1$=100円付近を維持すれば、輸出企業は助かる。中国も助かる。

▼極秘裏に準備される

 新ドルが発行されるとなると、発表日まで極秘です。漏れれば、大規模な預金取り付けが起こり、預金価値の半分への切り下げを嫌い、旧紙幣になるドルを売り、円やユーロを購入して損を回避するからです。

 情報から以上を申し上げるのではない。論理からです。こうしたことについて、極秘情報はあるわけもない。こうした論理的な推測は、予測リスクがあるので、利口(りこう)な人は、誰も言わない。言えば馬鹿です。馬鹿を引き受けます。

【ドル安だけなら、米国はデフレ型恐慌】
 これが大きくはずれ、起こるのは、ドル下落だけかも知れません。しかしそうなれば、世界からドル債が売られ、FRBが関与できない長期金利が上がって、米国経済は、確実にデフレ型の恐慌になります。日本にとって、どちらがいいか。

 610兆円の手持ちドル債を売らない(売れない)なら、米国が恐慌を避けることができる「新ドル」のほうがいい。

【ユーロは新ユーロ発行ができない】
 主要金融機関のレバレッジが30倍から50倍と、米国より借金が多いユーロも、新ユーロ発行(交換率旧ユーロ2:新ユーロ1)が対策になります。しかし、ユーロの対外債権・債務はほぼバランスしているので、この策は取りえない。ユーロの基幹国ドイツは、対外債権が多い。このドイツが、絶対反対するからです。

【日本にも不可能】
 日本の新円発行は、どうか。過去の借金が半分になる政府が助かりますが、1500兆円の金融資産を持つ世帯は、金融資産の750兆円分を失います。この策を、政府はとり得ない。世界の潮流に浮かぶタンカーのような船です。しかも首相単独には、マネーへの権限はない。国会でまとめるようなら、情報が漏れます。切り替えの前に預金の全額引き出しが起こって、金融が即日壊滅し、無理です。日銀にはこうした力技はできない。

 以上、本稿では、単なるドル安と、FRBのマネー供給(=米国債発行)では、海外が米国債を買えないので、米国の金融と経済は救われないこと、つまり恐慌に向かうことを示しました。唯一、世界恐慌を避けるための、論理から出る策は、2:1の交換率での、新ドル発行です。財布に残った旧ドルで買い物すれば、50セントの価値になります。$預金も$の国債や証券も半額になる。負債も半額です。

【後記】
 くれぐれも申し上げますが、本稿の1.21は、あくまで論理的な仮説です。日付は、ずれるかもしれません。しかし、異なる方法は、今のところ思い浮かびません。対策は? ゴールド買いでしょうか。

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無料での試読が、最初の一ヶ月間、できます。

<405号:特別号:米国流通と経済の現況
:リアルタイムリポート:後編の(1)>
2008年11月19日
【目次】
1.決定版:妄論を排す
2.断言する5つの結論
3.最終的にはドル切り下げの新通貨体制

4.米国のチェーン経営法の一般を述べれば
5.小売業の生産性を高める方法であるチェーン経営の3条件
6.CVSのDCと店舗の合体した在庫管理法と、店舗コスト
7.本部バイヤーによるセントルラル・バイイングの体制
8.DC内と店舗の在庫日数は、発注法で決まる
9.SKU当たりの発注量(PBとNB)


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