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ガザの行方が気になります 2009.01.13

 世間は、無策な国会のやり取りに嫌気がさし、景気の動向にも不安感が一層広がっています。そんななか、ガザの動向が気になるところです。マスコミは詳細を伝えませんが、イスラエル国内の政治状況などは、危機的な状況を迎えてきているようです。この様な雰囲気は、イランへの攻撃を視野に入れている可能性もあるのでは・・・・・、と思われます。以前、イラン攻撃を仕掛けようとしたイスラエルがアメリカに事前通告、それをアメリカがロシアに連絡、そのロシアがイランに伝え、イランが捕虜にしていたイギリス兵を即座に無条件解放し、イラン攻撃の口実が無くなり、うやむやに。遠い中東での戦争が、我々の生活に直接に影響を及ぼしてくる事態も想定されます。気になるところです。

そんななか、田中宇(さかい)さんからメールが届きました。

以下に、転載します。

・・・・・・・・・・・

ガザ戦争で逆転する善悪

2009年1月13日 田中 宇(さかい)さんからのメール

 ガザ地区とイスラエルとの間は、フェンスと地雷原が設けられた境界線によって隔離されているが、ガザの北端にある境界線からイスラエル領内を2キロほど北上した場所に「ヤドモルデハイ」という、牧畜と養蜂を営んでいるイスラエル人のキブツ(農業共同体村落)がある。ヤド・モルデハイは、ヘブライ語で「モルデハイを記念する」という意味だ。モルデハイとは、第二次大戦中の1943年にワルシャワのゲットー(ユダヤ人居住区)で、強制収容所送りに反対してドイツ軍に立ち向かう蜂起の指導者だったユダヤ人青年、モルデハイ・アニーレビッツ(Mordechaj Anielewicz)のことである。

 モルデハイは、ワルシャワ・ゲットー蜂起の中で行方知れず(戦死または自害したと思われている)となり、蜂起を生き延びた5万人のユダヤ人の多くは、トレブリンカなど強制収容所に送られた。モルデハイは、ユダヤ人社会、特にシオニスト(イスラエル建国支持者)に英雄視され、1943年末にポーランド出身者が中心に作った上記のキブツに、モルデハイを記念する名前がつけられた。1948年にイスラエル国家が独立宣言した直後、第一次中東戦争が起こり、キブツの周辺もエジプト軍とイスラエル軍との戦場となったが、イスラエル軍はエジプト軍をガザに追い出し、キブツ周辺に住んでいた無数のパレスチナ人が難民としてガザに強制移住させられた。(関連記事

 ヤドモルデハイのキブツの丘の上には、エジプト軍に空爆されて廃墟となった給水塔が、今も戦争記念碑として立っている。そのとなりには、手榴弾を右手に持つモルデハイ・アニーレビッツの銅像が立っている。この2つの記念碑が意味するところは「ユダヤ人は欧州のゲットーで蜂起してナチスと戦い、建国後はエジプトなどアラブ諸国と戦った末に国土を獲得した。この闘争精神を忘れるな」ということだろう。この精神は、イスラエル社会の全体に浸透している。(関連記事写真

 イスラエル人は、ゲットーやナチスの強制収容所からの解放を目指して戦ってきたはずなのだが、今のイスラエルは「ナチスと戦う人々」から「ナチスそのもの」へと、「正義」から「悪」へと転換してしまっている。ワルシャワのゲットーから脱出してイスラエルを建国した人々は、もともと住んでいたパレスチナ人をガザに押し込め、ガザにゲットーを作ってしまった。

▼ガザで戦争犯罪を繰り返すイスラエル軍

 ガザ地区に侵攻したイスラエル軍は1月4日、ガザ市街のはずれにあるゼイトン(Zeitoun)の町を占領した。イスラエル軍は、住民の中のサモウニ一族(Samouni)の若者3人を尋問した後、この一族が利敵行為をしそうだと考えたらしく、一族の約110人の老若男女を、一つの建物に押し込め、出てこないよう命じた。そして翌朝、イスラエル空軍がこの建物を空爆し、30人が殺された。負傷者を救出するため、赤十字の救急車が現場に向かったが、イスラエル軍の攻撃を受け、4日後まで現場に行けなかった。国連の人権高等弁務官は、この事件に対する真相究明を開始すると表明した。国際赤十字は、救急車を攻撃し、空爆で負傷した市民を放置したイスラエルを非難した。(関連記事その1その2

 またイスラエル軍は1月6日、ガザ北方のジャバリア難民キャンプで国連が運営していた女学校を空爆した。国連施設であるためイスラエルに空爆されるおそれが低いと考えられていた女学校には千人以上の住民が避難しており、3発の空爆で46人の避難民が殺された。国連はイスラエル軍に、女学校を含むすべての国連施設の詳細な場所を連絡してあったが、それでも空爆された。(関連記事

 イスラエル軍は当初、女学校に潜んでいたハマスの部隊が攻撃してきたので反撃しただけだと釈明し、動画まで用意して発表したが、現場にいた国連要員が、ハマスの部隊を女学校に入れたことはないと反論した。発表された動画は、何年も前に他の学校を撮った映像だった。ウソがばれたイスラエルは「女学校の近くからハマスが攻撃してきたので反撃したが、爆弾の着地点が少しずれて女学校に当たってしまった」と言い直した。(関連記事

 イスラエルは、人道上問題がある白リン弾を今回ガザで使用した件でも、世界から非難されている。またイスラエルは「ハマスが停戦延長に応じなかったので侵攻せざるを得なくなった」と説明していたが、実は開戦2週間前の12月14日、ハマスがイスラエルに停戦延長を提案したのに、イスラエルは断っていたことが、和平交渉を仲裁する米カーター元大統領の陣営による調査によって判明した。カーターは「イスラエルが戦争を回避したければ、簡単にできたはずだ」と述べている。イスラエルのガザ侵攻は自衛ではないことが、しだいに確定しつつある。(関連記事その1その2

 1月上旬に相次いで起きた、これらの戦争犯罪的な事件や暴露を機に、世界の世論は、それまでの「ハマスなどイスラム主義武装勢力が悪であり、イスラエルは自衛しているだけ」というものから「イスラム主義勢力との戦いを口実にガザの市民を大量殺害しているイスラエルは極悪だ」というものに転換した。

 これまでは親イスラエル的だった米国のマスコミは、イスラエル非難の記事を載せ始めた。中東問題に関する極右言論で知られるウォールストリート・ジャーナルでさえ、1月10日に「イスラエルは、ハマスによる小さな攻撃を口実に大規模なガザ侵攻を行い、市民を無差別に攻撃した。これは自衛策として正当化できるものではない。戦争犯罪など、重大な国際法違反である」とする記事を出した。(関連記事

 1月10-11日には、西欧など世界中で、イスラエルの戦争犯罪を非難する市民のデモや集会が開かれ、いくつかの西欧諸都市では10万-20万人規模の市民が集まった。ブッシュ政権への気遣いを口実に、ガザ侵攻について沈黙してきた就任間近のオバマ新大統領に対しても、看過するなという世論の圧力が強まった。「オバマは、11月のムンバイテロを非難したくせに、今回のイスラエルの戦争犯罪には黙っている。ブッシュと同じだ」という批判も出た。(関連記事

▼今のモルデハイはガザにいる

 1月7日、ローマ法王ベネディクト16世の側近であるレナート・マルティーノ枢機卿(Renato Martino)が、イタリア語のネットメディア( http://sussidiario.net/ )によるインタビューの中で、ガザ戦争について「(イスラエルもハマスも)双方とも身勝手だが、被害を受けるのは弱者の民衆(パレスチナ人)だ。今やガザは、巨大な強制収容所のようなものになりつつある」と述べた。(関連記事

 米国の サイモン・ウィゼンタール協会(かつてホロコーストに懐疑的な記事を載せた文芸春秋社の雑誌「マルコポーロ」を潰した団体)などのシオニスト団体やイスラエル政府は、この発言に対し「ガザをナチスの収容所にたとえるとは言語道断だ」とローマ教会を非難した。しかし今や世界では、ガザが巨大な強制収容所であることを否定する人の方が少ないだろう。シオニストの主張に同調する人は、日に日に減っている。

 パレスチナ人をガザに閉じ込めるイスラエルは、以前はアパルトヘイト(黒人隔離政策)をやっていた南アフリカにたとえられていたが、今ではその「悪さ」はナチス級に格上げされつつある。今回のガザ侵攻によって、イスラエルがガザに対して行っている行為は「アパルトヘイト並みの悪」から「ホロコースト並みの極悪」へと「昇格」した

 このような視点で、ガザのすぐ外にあるイスラエルのヤドモルデハイ・キブツの丘に立っている、ワルシャワ・ゲットー蜂起指導者モルデハイの銅像を見ると、以前とは異なる意味を包含しているのがわかる。モルデハイ像の前に立つと、2キロ離れたガザを攻撃するイスラエル軍が発射するミサイルの爆発音や銃声が絶え間なく聞こえ、爆発の噴煙があちこちから上がるのが見える。(関連記事

 1943年には、手榴弾を持ってナチスに立ち向かう青年モルデハイは、ワルシャワのユダヤ人ゲットーにいた。しかし、今のモルデハイは、ユダヤ人ではない。ガザという名のゲットーに住むパレスチナ人である。立ち向かう相手はナチスではなく「ナチス化」したイスラエルである。ハマスを支援してイスラエル軍と戦うガザの無数の青年たちこそ、現在のモルデハイである。

 今後もし、現在のモルデハイたち(ガザの青年たち)が「解放」されるとしたら、その時には、以前のモルデハイ(イスラエル人)は、今の解放された状態(イスラエルという国家を持つこと)を失い、シオニスト運動は破綻する可能性が高い。

 もともとハマスは、イスラエルが支援して大きくした勢力である。米国は90年代、中東和平実現のためにアラファトをチュニスからガザに戻したが、和平を嫌うシオニスト右派は、アラファトに対抗して仲間割れを起こしうる勢力をパレスチナ政界に作るため、ひそかにハマスを支援した。その後、ブッシュのテロ戦争によって反米イスラム主義が扇動され、ハマスは大きくなった。その意味では、ハマスの青年がモルデハイになり、イスラエルがナチスになるのは、米イスラエルのシオニストによる自業自得である。

▼悪の枢軸に入れるイスラエル

 イスラエルの人口の約15%は、イスラエル建国時や第三次中東戦争時に難民化せず、自宅を離れずに居残ったアラブ系(パレスチナ人)で、彼らは参政権を持つイスラエル国民である。ガザ侵攻後、アラブ系イスラエル人は反戦運動を展開したが、これを受けてイスラエルの選挙管理委員会は1月12日、反戦色があるアラブ系の2つの政党に対し、2月の総選挙での出馬を禁止する処分を決定した。これにより、アラブ系国会議員の約半数が再出馬できなくなった。(関連記事

 イスラエルは従来、中東で唯一の民主主義国家であることを自慢にしてきた。アラブ系政党は、連立与党への参加を誘われることはなかったが、議会内の勢力としては認められていた。しかし今回の禁止処分によって、イスラエルの民主主義は限定的な色彩を強めた。イスラエルは、イスラム聖職者組織の許可をもらわないと立候補できないイランと大して違わない「準民主主義」の国家になった。

 おまけに、イランは核兵器を持っておらず、IAEAに加盟して査察も受けているのに対し、イスラエルは秘密裏に400発もの核弾頭を持ち、IAEAにも加盟せず、査察要請も拒否している多民族国家のイランは国内少数派に対する人権侵害が多いが、イスラエルもパレスチナ人に対する人権侵害やガザでの虐殺など、人権侵害の面でもイランに引けを取らない。ブッシュ政権はイランや北朝鮮を「悪の枢軸」に指定したが、イスラエルは十分、悪の枢軸に加盟できる豊富な「悪さ」を蓄積している

▼停戦は困難、イランとも戦争か?

 イスラエルが早期にガザ戦争を終わらせられれば、イスラエルの悪さは、ホロコースト級からアパルトヘイト級に格下げできるかもしれない。しかし、エジプトが仲裁し、イスラエルが受諾していた最新の停戦案を、ハマスは拒否する決定を1月11日に下した。ハマスは、イスラエルとエジプトによって閉じ込められているガザの境界を開放することを停戦受諾の条件としていたが、イスラエルもエジプトも拒否しているからだ。停戦は実現しそうもない。(関連記事

 イスラエル軍は、数日中に停戦が実現しない場合、ハマスを壊滅させるまで戦争を続けねばならなくなると表明している。今のところイスラエル軍は、ガザ地区の北部を占めるガザ市街に入っておらず、ガザ市街を包囲する布陣だが、このままだと近いうちにイスラエル軍はガザ市街地の中に侵攻し、市街戦が始まる。死者が急増する。

 今後、戦争が長引くほど、イスラエルの戦争犯罪は増える。イスラエルは、北方のレバノン南部のイスラム主義武装勢力ヒズボラ(シーア派)とも開戦する可能性が強まる。ヒズボラは慎重な態度をとっているが、イスラエル軍はレバノン上空で戦闘機を低空飛行するなど、挑発行為を繰り返している。イスラエルは、ガザとレバノンの両方で戦争するという自滅策を考えているかのように見える。ヒズボラと開戦すると、イランやシリアとも開戦する中東大戦争が近くなる。オバマ陣営の顧問をしている米国のペリー元国防長官は1月8日に「今年中にイスラエルがイランに戦争を仕掛ける危機が起きるだろう」と発言した。(関連記事

 イランが戦争になると、今は下落している原油価格が再高騰する。イスラエルがイランを攻撃すると、報復措置としてイラクの親イラン派のゲリラがイラク駐留米軍にゲリラ戦を仕掛け、米軍はクウェートからバグダッドに至る唯一の補給路をゲリラに奪われて壊滅し、米国は地上軍(陸軍と海兵隊)の大半を失い、世界のパワーバランスが塗り替えられるだろうと、米国の軍事専門家ウィリアム・リンドが1月9日の記事で書いている。(関連記事

 中東での善悪関係が転換する中で、米政府は、ブッシュ政権の「イスラム=悪、イスラエル=善」を脱却し、オバマ政権は「喧嘩両成敗、米国による中立指向の仲裁」へと転換しようとしている。ガザ戦争についてオバマができる限り沈黙しようと考えてきたのは、ガザ侵攻が長引くほど、イスラエルは世界から悪者とみなされる傾向が強まり、中立的な仲裁がやりやすくなるからかもしれない。イスラエルが米政界を牛耳っている現状から考えると、早い段階で何か表明するとしたら「イスラエル支持」を表明せざるを得なかった。米議会はいまだに強くイスラエルを支持しているが、米国外の世界の世論に引きずられるかたちをとれば、以前よりは中立な態度をとりやすくなっいる。

 ガザ戦争による善悪転換が引き起こしそうなことは、ほかにもある。それは、シオニストが「ホロコースト」(ナチスによるユダヤ人虐殺)を誇張することで世界の世論を引きつけ、国際政治力を拡大維持してきたプロパガンダ戦略が弱まることだ。ホロコーストの事実性に対して疑問を持つことは、依然として世界的に禁じられており、シオニストによるホロコースト誇張戦略自体はまだ破綻していない。だが、すでにイスラエルは今回のガザ戦争によってナチス並みの「極悪者」になりつつある。イスラエルの「被害者としての強み」は「加害者としての弱み」によって打ち消される傾向が強まる。(関連記事



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