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サブプライムローン、一年前の提起  2009.03.21

2009_03_21 015mk.JPG
2008.04.01に配信された吉田繁治さんからのメールです。

一年前のメールを改めて読み直してみました。

 

・・・・・・・長文ですが、以下に転載します・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

こんちは、吉田繁治です。無料版の発行が、2ヶ月余の途切れてしまったことを、お詫びします。

しかし、その間も、読者数は増加しています。登録後、一度もお読みにならない方もおられ、申し訳ないことと思っています。

なお、姉妹誌である『ビジネス知識源プレミアム(有料版:週刊)』は、読者数と売上において、ビジネス部門だけでなく、全部門を通じ、1位を続けています。有難いこと(It's  difficult to be.)で、感謝しています。

有料版では、経営や戦略だけでなく、経済の時事テーマへも整理した論考・考察・予測をお届けしていますが、無料版の読者の方には、最近、まとめたものを送っていません。

経営と戦略、そして経営の環境である経済を主領域として、分析・考察し、お届けしてきた本稿では、ここ8カ月の、世界の経済問題の根底になっている「米国発のクレジット・クランチ(信用収縮)」に触れないわけには行きません。

基本的なことから解き明かし、2008年と2009年の経済への見通しを作って行きます。

今、世界を覆っている金融危機(=不良債権)の問題を解くには、若干の予備知識と、文中の「」で囲んだキーワードへの知見が必要です。

金融や証券には、テクニカルターム(技術用語)が多い。加えて、金融工学(=リスクの確率論)を使った「証券化」が発達した80年代以後の金融では、妙な言葉も多いのです。

サブ・プライム(信用度が低く、後で金利が高くなるローン)もその一つです。

今、サブプライムローンのデフォルト(回収不能)増加を端緒(07年8月)とし、
(1)住宅価格の全体と、
(2)世界の株価が下落し、
(3)米ドルも安くなって、
(4)金融連鎖のクレジット・クランチ(信用収縮)が起こっています。

(注)クレジット・クランチの一例は、米国のクレジットカードの使用枠が減らされ、ローンの金利が上がることです。

米国では、金融機関の損失から、住宅ローンのみならず消費者ローン、そして企業融資にまで「貸し渋り」が起こっています。

マネーを経済の血液に例えれば、不良債権(出血)の増加で、血圧が下がり、個人消費、住宅購買、企業の投資活動、金融の融資と投資が縮退する。

他方ではエネルギー・資源・穀物が、ファンドの投機から高騰し、一次産品全般に、価格騰貴のインフレが起こっています。ファンドは、その巨額損失を回復するため、上げて売って利益確定する。

以上のような複合状況を、どう理解するか? 
そして08年、09年と、どこへ向かうのか?

有料版をお読みの方は、確認と復習のつもりでお読みください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

  <Vol.226:サブプライムローン問題の帰結と経済(1)>

【目次】

1. 07.8.09の信用ショックから
2. 米国の住宅ローンの特徴
3. 住宅ローン関連証券の、価値の怪しさ
4. 2008年は、600兆円の資産担保証券の全体が下落
5. 金融機関の自己資本の喪失から起こる事態を「経済恐慌」と言う
   が・・・
6. 100兆円相当の海外からのファイナンスが必要な米国

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1. 07.8.09の信用ショックから

【状況の展開】
今回の金融危機の起点は、昨年の8月9日の、資産担保証券(ABS: Asset Backed Security)の急落からでした。

「金融危機」は、
・金融機関が多額の損失を蒙り、
・信用に必要な自己資本を失って、
・金融機関間の決済に、不全をきたすことです。

企業も個人も、銀行への預金や振込みを通じ、経済活動に必要な代金の決済を行っています。

金融危機が具体化すれば、預金があっても決済ができず、経済は機能不全になります。

【対策】
米国と欧州の中央銀行(FRBとECB)は、短期の資金不足による金融の連鎖倒産を避けるため、緊急融資を行いました。

それが08年の3月まで、持続的・間欠的に、続いています。
(注)今後も、FRBとECBは、緊急資金注入を続けます。

「資産担保証券(ABS)」の、「原資産」になっている米国住宅ローンの特徴は、2つです。金額の大きさと、証券化。

順に、見てゆきます。

▼(1)米国住宅ローンの残高の巨額さ(1300兆円)

その残高は、$13兆(1,300兆円)です。

わが国の政府部門(国+地方)の総負債(1,100兆円)より大きい。(注)わが国の住宅ローン残高は約200兆円と、米国の約7分の1です。

米国では、1世帯当たりで、日本の3倍の額になる住宅ローン(借金)を抱えています。

他方では、この1300兆円を貸した金融機関があるということです。これは、住宅ローンの債権(回収権)が「原資産」です。住宅ローンを払えない世帯が増えれば、金融機関は多額の損失を蒙ります。

日本で、政府財政がいよいよ困窮し、国債(国家の借金)の市場価格が暴落すればどうなるでしょう。国債を買っている金融機関(銀行、証券、日銀、郵政公社、年金基金等)は巨額損失を蒙り、即日に、金融危機が起こります。

世界最高の残高である日本の国債は、短期証券(102兆円)と政府借入(57兆円)を含むと、833兆円(07年9月末:財務省)です。この1.56倍もの住宅ローンですから、大きさが了解できるでしょう。

この住宅ローンは世帯の負債であり、同時に、金融機関の資産です。住宅価格が下がると、世帯は返済が困難になり、金融機関に不良債権が増える。そして金融が機能不全になってゆく。

日本での833兆円の国債価格の暴落(20%以上の下落)に似た事態が、07年8月以後の米国で起こっていると考えれば、その重大さが了解できるでしょう。

【8.09ショックから】
・2006年央からの住宅価格の値下がりと、3年目から10%以上に高くなるローン金利(サブプライムローンの約定)のため、
・ローンを払えなくなった世帯が、2007年の年初から増えていたことが、「2007年8.09の金融ショック」の起点でした。

欧州と米国の金融機関(銀行、証券、及びファンド)が、想定利回りの高い「資産担保証券(ABS: Asset Backed Security)」を買って、持っているからです。

ABSの価値は、
・担保となる資産(住宅)の時価と、
・世帯の支払能力の低下によって、下落します。

●原資産である住宅ローンの「予想デフォルト率(返済不能率)」が上がると、ABSの市場価格は、それ以上の率で、下落します。

金融機関が持つABSの残高は、住宅ローンの巨額さ(1300兆円)に比例し大きい。

住宅の値下がりが、
・ABSを買っている金融機関の損失を増やし、
・資金が不足する金融機関の、倒産が生じます。

ABSには理論価格はある。しかし今,「米国の住宅はもっと下げ、ローンの回収不能は膨らむ」という予想から、理論価格をはるかに下回っても売れない(後述)。

●金融機関の倒産は、当年度利益や自己資本がなくなることではない。
明日または翌週の支払いに、手許の資金が足りなくなり、決済ができないことです。

金融機関は、「資金繰り」が正常な時だけ、機能が成立する特殊な民間会社です。

金融機関の資金繰りは、本部の担当トップだけしか、知りません。
他の幹部や社員は、支店で日常業務を行っているだけです。そのため、TVニュースを聞き「ある日突然閉鎖」になる。

【金融機関のコール市場=短期資金の融通市場】
世界の金融機関は、相互に、コールローン(金融機関間の短期の貸借)をしています。

今日余る資金は、金利がつかないので、金庫には置かない。
(注)金融機関は、調達金利より高い運用金利が利益です。

コール市場は、money  at call(電話すれば借りることができる)が原義です。

金融機関のコールに応じ、翌日返済(オーバーナイト)という条件で貸します。この金利が、最も低い短期金利です。ロンドン市場で決まるLIBOR(ライボア)がこれです。

コール市場は、「お互いが資産内容を信用する」ということで成立しています。

ところが「取引相手となる銀行や証券が、どんな損失を隠しているか分からない」となると、コール市場が凍ります。(注)今、米国の金融機関に、この状況があります。

これが金融機関の連鎖倒産(システミック・リスク)です。

連鎖倒産が起こると、金融機関から民間企業への資金供給が停止し、血液不足に陥った民間経済は、金融を原因に、恐慌に陥ってしまう。

身体(工場、店舗、人の働き)は正常でも、資金(血液)が一瞬でも不足すれば、生命(経済活動)が維持できないことと同じです。マネーは、血液に相当します。恐慌は、経済の心不全です。

政府や中央銀行が慌てて、金融機関に緊急資金供給(緊急輸血)を行うのは、金融の機能不全を原因に、血液(マネー)の不足から起こる経済恐慌を防ぐためです。

企業に預金があっても、預かった金融機関の資金不足で、引き出せないとなれば、明日の仕入代金や手形の決済ができない。

日本では、三洋証券の倒産と、山一証券の損失飛ばしが発覚した1997年に起こったことです。アジアとロシアでは、1998年でした。

▼(2)住宅ローンの証券化

米国(及び英国)の住宅ローンの、2番目の特徴は、上記で触れた「証券化」です。

(1)窓口となる金融機関(最大手がカントリーワイド)が、住宅ローンを貸します。
(2)その債権(つまり返済と利払いを受ける権利)が「証券化」され、他の金融機関・ファンド・投資家に、売却されます。

住宅ローン会社にとっては、世帯に貸す資金を得る手段が、証券化です。

その買い手は、国債より金利が高く、上がっていた住宅が担保になるので、株より「安全だ」と考え、大量に買っていた。

【予想デフォルト率】
証券化のときは、ローンの「予想デフォルト率(返済不能率)」が、リスク率として確率化されます。

例えば3%の予想デフォルト率なら、「市場の長期金利(例えば5%)+デフォルトのリスク率3%=8%」が、その証券の、ベースとなる利回りになります。

●しかし、実際のデフォルト率が、証券を作ったときの予想デフォルト率より高くなれば、資産担保証券の市場価格は、下落します。

今回の問題の起点は、
・米国の住宅が、過去15年上がり続けていたため、
・予想デフォルト率が、低く見積もられていたこと。

そして、後述する「証券化のテクニック(=金融工学)」のため、ABSの買い手が、リスクを低く想定しすぎたことです。

金融工学は、1998年のLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の破産に続いて、今度は、住宅ローンの証券化で、派手な失敗をしています。LTCMはロシアの国債のデフォルト率を100万年に3回(シックス・シグマ)としていた。

デフォルトの確率は、過去の実績を使います。過去15年、住宅は上がっていた。そのため、海外からもローン資金がふんだんに供給され、需要が多くなって、住宅は更に上げた。デフォルト率は下がって行った。

その、過去の低いデフォルト率を元に、証券化されリスク計算された。2006年半ばから住宅価格が下落すると、デフォルト率が上がり、低いリスク率で見積もられていた理論価格は、信用されなくなった。

こうした「単純ミス」があった。米国住宅の全部が、同時に下がる確率はなんと10万年に1回とされていたのです。

■2. 米国の住宅ローンの特徴

米国の住宅ローンの主なものは、3種です。
以下の残高は、今後の予想をする際に、重要です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)プライム・ローン(通常の住宅ローン)
           →残高の80%($10.4兆:1040兆円)

(2)オルトAローン(審査を簡略化した金利の高いローン)
           →残高の10%($1.3兆:130兆円)

(3)サブプライムローン(審査を簡略化し、当初は金利が低く、
  3年目から金利が上がるローン)
           →残高の10%($1.3兆:130兆円)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

以上3種の米国住宅ローンの特徴は、
・住宅が値上がりしている限り、
・市場の金利が低くなったとき、
(ほぼ無条件で)低い金利のローンに借り換えができることです。

例えば、問題のサブプライムローンは、借りた当初の2年間は、金利が4%~6%と低かった。3年目から10%~12%に上がる。約500万の世帯(低い所得の人が多い)は、なぜ、危険なローンを競って借りたか?

2000年代は、住宅価格が1年で10%から15%も上がっていたからです。
2500万円で買った住宅が、7年で5000万円に上がる勢いでした。人々はこれに希望を託した。

借りた時2500万円だったとします。3年目は3000万円には上がっていた。そうすると、3年目に金利が6%台と低いプライム・ローンに借り換えればいい。住宅資産は、500万円増える。

危険なサブプライムローンは、米国の住宅価格が大きく上がった2004年~2006年に、多く組まれたのです。新しい住宅ローンの30%を超える額だった。

失業で無所得の世帯にすら、サブプライムローンがおりた。住宅ローン会社が発行する証券が、世界に売れていたからです。

ところが、2006年の半ばころから全米の住宅価格の上昇が止まり、値下がりする州が、月を追って増えた。

一方では、買って3年目を迎え、ローン金利が10%以上に上がる。期待した借り換えが、できない。

2007年央には、サブプライムローンのデフォルト率が15%にまで上がります。そして今、オルトAローンもあやしくなり、プライムローンですら、借りすぎのため、返済が難しくなるものが増えています。

これを見て、住宅ローンの債権を原資産にしていた、資産担保証券(ABS)の、下落が起こったのです。下落どころ、流通市場が消えた。

■3.住宅ローン関連証券の価値の怪しさ

住宅ローンを原資産にする証券は3種に分けることができます。

(1)シニア債:
信用度が高く、利回りが低い。格付けはAAA(トリプルA)で、その信用度は米国債並み。金融機関が多く持つ。

(2)メザニン債(信用度が中二階の証券):信用度が中程度で、利回りも中程度。格付けはA(シングルA)で、優良
会社の社債並。機関投資家が多く持つ。

(3)ジュニア債(信用度が低い証券):
信用度は低いが、利回りは高い。格付けはBBBクラスで、ジャンク債並み。
高い利回りを求めるファンドが多く持つ。

シニア債、メザニン債、ジュニア債と3種に分けるとき、以下のような金融工学の方法を使います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(1)債権の合成:
各種の住宅ローン、消費者ローン、企業ローン等の債権を合算する。
いわば「ちゃんこ鍋」風です。
 ↓
(2)トランシェ(切り分け):
「優先」、「劣後」の考えで、この「合成証券」を切り分ける(トランシェする)。ここが、わかりにくいと思います。

例えば100億円の合成債権(=回収権)があるとします。そのうち、30億円が回収されたとします。その回収分を、シニア債(優先債)に優先して割り当てる。次がメザニン債、最後がジュニア債(劣後債)です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

こうした、優先・劣後のトランシェ(切り分け)で、
・AAA格の証券を作って「シニア債」とし、
・次を利回りが中程度の「メザニン債」として、
・残りを利回りが高い「ジュニア債」とする。

それらを、格付けのブランドをつけて売る。

住宅価格が上がっている限り、所得の少ない人や移住者が借りることが多いサブプライムローンも、回収不能にはならない。

ローンの返済が滞れば、高くなった住宅を接収し売ればいいからです。米国では、わずか3ヶ月、約定返済と利払いが遅れると、世帯は住宅を手放さねばならない。

無理なローンを借りた500万世帯のうち、すでに200万世帯が、住宅を追われています。これは今後、もっと増えます。そのため、住宅価格は更に下げます。

2008年は、住宅価格が10%~15%、2009年も15%は下がる感じです。
(注)統計は3ヶ月~6ヶ月は遅れます。

●$13兆(1300兆円)の住宅ローンから、こうした証券化が行われたのは$6兆(600兆円)です。

これらの証券は、60%から70%を米国の金融機関が、次に欧州、そして日本と中国を含むアジアや中東が持ちます。

90年代中期以後の世界の金融は、国債やこうした証券、及び株、社債の売買業です。信用査定が必要な、直接の融資は減っています。

窓口となって貸す会社と、その機関が発行する証券を売買する大手(プライムブローカー)が分離した。

その証券に、各種の保険(クレジット・デリバティブ)が係っている。
そのため、保証があるかの如く、安易に、証券が売られ、買われたのです。

こうした住宅ローン関連証券(米ドル建て)を買った会社は、(1)米国の住宅価格の下落と、(2)米ドルの下落で、二重に、疑心暗鬼になった。

何がその証券の原資産として混合されているか分からないからです。
ちゃんこ鍋が、中身が不明の、食べられない闇鍋になったと言えばいいでしょう。

■4.2008年は、600兆円の資産担保証券の全体が下落

この600兆円相当の、資産担保証券の時価は、今、どうなっているか?

▼資産担保証券(Asset Backed Securities:ABS)の下落

〔格付け〕   2007年9月  2008年3月価格指数
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
AAA       95       55
AA        85       20
A         60       18
BBB       40       15
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
         (元本価値100:financial Times:08年03月)

現在の価格下落は、「とんでもない」と言えるレベルです。

元本価値1000億円の、AAAの格付けのABS証券を持っていても、その市場価格は550億円です。損失が450億円。

BBBの格付けのものなら、元本価値1000億円は、紙切れと言える150億円に下がっています。

確認のため言えば、AAAは、プライム・ローンの部分であり、米国債並みに、利払いと返済は安全とされていました。国の信用は、紙幣発行ができ、徴税権があることです。

ところが、08年3月ではこれが、55%の価格に下がった。

原因は、
(1)「米国の住宅ローンと消費者ローンは、優良部分でも、デフォルトが増加する」という予想に変わったからです。
(2)加えて、米ドルの下落予想もあります。

AA、Aがそれに次いでいました。BBBは、デフォルト・リスクは高いが、その分に見合って利回りが高かった。20%水準の高い利回りを求めるファンドが買っています。

●600兆円もの残高の資産担保証券(ABS)は、元本の55%から15%の価格に下落してしまいました。

●実は、今、価格を安くしても、米ドル建てのABS証券(デリバティブの一種)は、皆が怖がって買わないという流通市場の消滅が起こっているのです。

株式市場で言えば、気配値はあっても、売買がゼロに近い。
素人は買っていません。金融機関とファンドが持つ。

金融機関は、3か月決算のサイクルで、株や証券のリスク資産の時価評価をしなければならない。

米国を中心とする金融機関が、08年3月現在で蒙った資産担保証券の含み損の合計は、おそらく300兆円~400兆円になっているはずです。

●米欧の主要金融機関(メガバンクやメガ証券)の、自己資本は合計でも200兆円です。(注)自己資本を増やす年間純益が20兆円水準です。

●米欧の主要金融機関は、現在の自己資本の1.5倍~2倍の不良債権を抱えてしまったと見ていいでしょう。

金融機関が自己資本を失えば、金融業務はできない。

●今は、損失の本当の開示が遅れているから、なんとか維持されている状況です。

【その証拠】
3月の最初の週、米国最大のシティバンクが、コールによる借入ができず、決済不能に陥るという噂が流れ、そのため、米FRBは、慌てて23兆円相当の、緊急資金注入を行っています。

IMFが08年3月に公表した、「住宅ローン関連証券の損失総額は85兆円」というのは、甘い数字です。上記の、証券価格の時価の下落率を見れば、その甘さは明白です。

(注)こうしたときの当局発表は、ほぼいつも3分の1くらいです。日本の、金融機関の不良債権の発表もそうでした。

 5. 金融機関の自己資本の喪失から起こる事態を「経済恐慌」と言うが・・・

▼90年代後期の日本

1990年代の後期(橋本内閣の時代)、日本発の世界恐慌が言われ、その防止策が、
(1)金融機関の救済のための政府資金投入、
(2)ゼロ金利策による、世帯から金融機関への所得移転(1年間で約30兆円)でした。

▼2008年、2009年の米国

2008年、2009年は、米国の住宅価格が更に下落するため、米国発の世界恐慌の恐れがあります。

想定できる対策は、日本よりはるかに巨額になる、
(1)金融機関への政府資金投入、
(2)実質ゼロ金利策、
(3)住宅ローン証券の、政府による買い上げ、
(4)住宅ローンを借りている世帯への徳政令(債務カット)です。

つまり、政府・中央銀行からの資金供給で、世界に波及するクレジット・クランチを防ぐことです。これは、資金を、じゃぶじゃぶに注ぐことでもあります。

▼日本と米国の違い

米国と日本では、根本的な違いがあります。

(1)日本は、海外からの純借金はなく、一貫して200兆円相当の純債権国だった。日本は、国内で問題を片付けることができたのです。

背景に、ゼロ金利でも、金融危機でも解約されなかった銀行・郵貯の個人預金800兆円があったためです。

(2)米国は、海外に対し300兆円相当の純債務があり、一貫して債務国である。

米国にとっての難題は、国内に世帯の預金が少ないことです。

そのため問題の解決には、海外からの資金流入(ドル債券、証券買い)が必要です。(注)米国の世帯の資産は、株、住宅、年金基金です。
いずれも相場で価格が上下する資産です。

●海外からの資金流入がなくなると、米国の、資金供給源になるFRB自体が信用を失います。これは、米ドルの1$=60円への下落を意味するでしょう。

米国は、金融機関の自己資本喪失の解決に、金利を、ゼロ付近に下げねばならない。しかしそうすると、今度は海外が持つドル($6兆=600兆円)が売られます。誰も、損をする通貨はもちたくない。

【対比】海外のファンドから借金をし、それを投資していた1998年のタイ(アジア通貨危機の起点)のようになる。タイからファンド資金が引き揚げたとき(バーツ売り)、タイ中央銀行は、対抗策を持たなかった。

【過剰消費】
米国の世帯の、ローンによる過剰消費(1年100兆円相当)が、世界の輸出経済を引っ張る機関車でした。(注)日本は、米国とはちょうど逆で、生産力が需要を上回る経済です。

中国経済、アラブ、アジア、そして日本の輸出は、米国の貿易赤字によるものです。要は、対米輸出による経済成長だった。

日本の中国やアジアへの部品輸出は、中国・アジアで製品が組み立てられ、米国に最終商品が輸出される「三角貿易」です。

■6. 100兆円相当の海外からのファイナンスが必要な米国

●米国は1年で100兆円を、海外(欧州、中国、日本、中東、アジア)からファイナスする必要があります。

このファイナンス(資金調達)が、ドル建ての住宅ローン証券・社債・国債の、海外による購入です。

ところが、世界の通貨に対するドル下落は、今、ドル建ての住宅ローン証券・社債・国債が売られていることを示します。

実に・・・すごいことになってきました。

5%レベルだった米国の政策金利は今、FRBの緊急利下げで、その半分以下の2.25%です。

消費者物価の上昇が、資源の高騰のため4.1%ですから、実質金利は、〔4.1%-2.25%≒1.85%〕のマイナスです。マイナス金利の米ドルが、海外から買われることがあるのか?

日本との関係で言えば、3%の金利差が、ドル買いの条件でした。他国も類似します。日本が1%なら米国は4%以上が必要です。

・ところが利回りが、日本に準じて低くなり、
・加えて、世界の通貨に対するドル安での為替差損が予想できるドル
 債券を誰が喜んで買うか?

米ドルが更に下落すると、米国の輸入物価は上がります。世界からの輸入品を売るウォルマート、ギャップ、リミティッド、ホームデポの店頭価格が上がります。

ローン金利の高騰で傷んだ家計の消費は、当然に減ります。米国の消費者ローンは25%とサラ金並みで、住宅ローン金利(プライムローン)も、8%以上に上がっています。

【政府策と逆行する市中金利】
FRBが金利を下げても、市中金利は上げています。
企業への融資からも、回収が増えている。

政策金利の下げ及び資金供給と逆行し、民間での資金不足ためのクレジット・クランチが起こっているからです。その原因は、金融機関の自己資本の喪失です。

米国の08年3月期、及び08年6月期のGDPは、実質でマイナス予想でしょう。個人消費が、70%を占めるからです。

海外からの資金流入が止まれば、米国経済の息の根がとまると言われて久しい。2007年7月まで、それが起こらなかった。2007年8月以後、実際のことになった。

息が止まるのを防ぐため、米FRBは緊急資金供給を続けていますが、これはドル札の増刷と等しい。そのため、水膨れした米ドルの価値が下落する。

【金融部門の利益】
加えて、米国には、別の特殊事情もあります。米国の全企業利益のうち40%部分が、金融収益であることです。

米英は、90年代を経て、金融の仲介によって稼ぐ国に変わっています。
この金融収益が、予見できる2008年、2009年と、ゼロに近くなる。

これは、米国の株価が、今より20%~30%下落することを意味します。

世界恐慌は、米政府とFRBの金融対策で避けることはできるかもしれない。

しかし、世界経済の07年までの実質成長率(5%:金額で4500兆円×5%=225兆円)は、相当の打撃を受けるはずです。

日本の国債(833兆円)が増発不能(=市場金利の高騰)になる前に、確実と思われていた米国の住宅ローン(1300兆円)の市場価値が暴落した。

本来は今、世界の金利は上昇し、物価が抑えられねばならない。
しかし、中央銀行は金利を低くし、資金を水割りし増やす。
この矛盾が、どういった帰結を生むか?

次号では考察を深め、2008年と2009年の経済予測をします。恐らく今、戦後60年で最大の、経済の転換期です。

see you soon!

【後記】
3月半ばは、イタリア出張でした。米国以上に高騰した欧州(特に南欧)の住宅価格も、米国の6ヶ月遅れくらいで下落しています。中国も含んで、世界バブル崩壊の様相を呈しています。

3年前のイタリアのとき、ホテルに籠って伸びたカップラーメンを食べ、無粋にも原稿書きをしたため見逃したフィレンツェは、16世紀のイタリアルネサンスを遺す都市国家でした。

家人がフィレンツェが好きなようで、再び行ったのです。
「原稿が・・・」と、また思ったのですが、フィレンツェは発見でした。
見ると聞くでは、やはり、違います。

末尾に、08年3月分の有料版の目次を掲載しています。

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↓著者へのメールのあて先
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